飛騨地方におけるさるぼぼコインの普及について所感
https://gyazo.com/86d3fed35bc2f11bc160169615492f91
@akasofa: QR決済のカオスっぷりは地域限定とか地銀とかも参戦してて上手くまとめたら相当おもしろいネタなんすよね。さるぼぼコインとか地元でも誰も使ってなさそう。 @silossowski2: @akasofa さるぼぼコイン、キャッシュレスとか理解していない高齢者もスマホにアプリ入れて使ってて、飛騨では下手したらPayPayよりも普及率高いです(飛騨はそういう土地です) はじめに
先日、赤ソファさんのツイートにクソリプっぽい絡み方をしてしまい、リプするんだったら、ある程度ちゃんとエビデンスをもったうえでするべきだったなと反省しつつ、この記事を書きます。
「さるぼぼコイン」とは、飛騨地方の信用組合金庫である、ひだしん(飛騨信用組合)が運営する電子地域通貨・キャッシュレス決済です。スマホにアプリ入れて、QR読み取って決済するという、PayPayと同じ感じのやつです。
飛騨に帰省した際など、だいたいどの店でもさるぼぼコインに対応していたり、野菜の無人販売所でもQRが置いてあったり、神社仏閣の賽銭箱にも、さるぼぼコインのQRコードがついていたりと、かなり普及しているイメージがあります。
ちなみに賽銭に利用できるというのは、運営元が銀行や信用組合のような金融機関だからできることだったと記憶しています。同じことをPayPayでやると、たしか規約違反でボッシュート食らうのではなかったか。資金移動法とか。あまり詳しくないし、ここが本題ではないので、興味あったら各自調べてください。
わたしの母親(70歳)は、スマホの文字入力もおぼつかないほどデジタルに疎いのですが、さるぼぼコインはスマホに入れていて利用しています。PayPayもタッチ決済の類もまったく知らないのに、さるぼぼコインは使っています。
リプに書いた「高齢者もスマホにアプリ入れて使ってて、飛騨では下手したらPayPayよりも普及率高い」というのはこのへんから来ているのだけど、ちょっと調べたら、やはり「高齢者がよく利用している」という言及が少なからずありました。
https://youtu.be/UVn1PaKPwYs?si=LWdQzOZFK_7GNqrd&t=292
概要
まずひだしんの説明です。ひだしんは高山市・飛騨市・白川村の2市1村を営業地域とする信用組合で、同地域ではトップシェア(資料1 資料2)となっています。ちなみに、競合する金融機関としては、高山信用金庫(たかしん)、十六銀行、ゆうちょ銀行、JAバンクあたりかと思います。 「さるぼぼコイン」も同様に高山市・飛騨市・白川村で展開されていますが、最新データとなる2025年の普及率とユーザー数は以下のとおりでした。
利用者数: 約35,000人(2025年9月時点)
利用者率(人口比): 31.8%
加盟店数: 2,090店舗(2025年9月時点)
上記データは休眠ユーザーも含んでいるのかとか、エリア外のユーザーも含んでいるのかとかはよくわかんないけど、雑にあれすると、住民のだいたい4人に1人が利用している計算になります。
また、PayPayの普及率との比較でいうと、2021年のちょっと古いソースなうえに、ひだしん担当者の所感によるものとなってしまいますが、2市1村エリアでのPayPayの普及率は10%ほど、対してさるぼぼコインの普及率は30〜40%という言及がありました。資料3 PayPayとの比較
上記のような現象は、さるぼぼコインのサービス開始時期が早かったことにも関連しています。
さるぼぼコインは2017年にサービスを開始(試験運用〜本格導入)しているのに対し、PayPayは2018年後半にローンチされています。冒頭で「PayPayと同じ感じのやつ」と説明したけど、実はさるぼぼコインのほうが先でした。
(QR決済だとたぶん2016年サービス開始のOrigami Payが一番古いのかな。2020年にサービス終了しているけど)
(Origami PayのWikipediaに「決済音を含め、サウンドブランディングはサカナクションが担当」という記述があって、そこが衝撃的だった。サカナクションの決済音鳴らしてえ〜)
という感じで、PayPayが普及するより以前に、さるぼぼコインが飛騨では普及拡大させていたため、シェアを持ち続けているという格好になります。
また、チャージ上限が200万円に設定されているため、スーパーや商店でのお買い物利用だけでなく、車や住宅リフォームのような高額取引、業者間での卸売等の取引での利用も促進されており、地域経済に深く食い込んでいる状況が見られます。
また近年では各自治体で「物価上昇給付金」的なものが支給されましたが、高山市・飛騨市では、その給付にもさるぼぼコインが利用され、紙での発行に比べてコストダウン、給付時期の短縮を実現したとのこと。
ふだんから地元コミュニティFMラジオ hit's FMを聴いているのですが、確かに「さるぼぼコインでの受け取りが便利」と盛んに宣伝されていました。
高齢者への普及についての所感
冒頭に引用したYouTubeでもあったように、高齢者にも普及している(というか、高齢者のほうが使ってるまである)という状況があります。
高山市・飛騨市・白川村の2市1村のトップシェア金融機関だし、高齢者でもだいたいみんな口座持ってるから、というのもありつつ、ひだしんは営業力も強いというのがあります。
昔すぎてソースも動画も残ってないのだけど、久米宏が司会やってたころのニュースステーションで、「いま注目の金融機関」として紹介されていたことがあり、「これまでに不良債権を出したことがない」みたいな理由だったと記憶しています。
(当時は銀行の経営破綻や統合が社会問題になっていた時期だったからそういう特集やってたのだと思う)
地元の事業者や個人宅に訪問し、誕生日にはプレゼントをしたり、困りごとをヒアリングしたり、きめ細やかな営業活動を行うことで顧客の状況を把握して、それを金融サービスに無理なく落とし込むみたいな話で、要するにあんま金貸してくれない渋い金融機関ではあるのだけれど、母親が誕生祝いとして、ひだしんからもらった飛騨牛カレーとかがあります。
そういった営業活動のなかで、デジタルに疎い事業者や高齢の個人客にも、手取り足取りレクチャーや、利用方法のアドバイスを行ったのだろうなということが想像できます。
PayPayも実際やってみればそう難しくはないけれど、金融機関との連携、クレカとの連携だとかの設定はハードルだし、再度その設定をやってみろと言われたら、やり方とかあんま覚えてないし、かなりだるい気持ちになります。
そこを営業力とトップシェアというアドバンテージで突破して、若者はPayPayとかタッチ決済に移行しても、高齢者はそう簡単に新しいサービス利用できないし、あとは事業者ユーザーを掴んでいることも大きいのだろうなと感じます。
まとめ
「さるぼぼコイン」は電子地域通貨の先行事例として、新たに参入する金融機関・自治体から参照されており、視察なども多く受け入れているようです。またその資料のなかで、新たに電子地域通貨を導入しても、やはりPayPayからの乗り換えが進まず普及しないという現状があるということに言及されていました。(資料4) その逆パターンとして、「さるぼぼコインで事足りているからPayPayを新たに利用する必要がない」といった状況になっているのもありつつ、最近では「大型チェーン店はPayPay、地元商店やスーパーはさるぼぼコイン」という使い分けもされているとのことです。
もちろん還元率等でさるぼぼコインがお得だからという事情もありそうですが、「地元愛」というと陳腐だけど、地域経済を回していく意識や、飛騨は周囲の都市や地域から物理的に隔絶されていた土地でもあるため、ローカルサービスが定着しやすい土地柄というのがあります。
高山市の「古い町並み」も条例上の景観保存もありつつ、実は条例で決められてもいないのに、地元の人たちが町内の決め事としてだったり、自然発生的に自主的な景観保存に取り組んでいる部分というのもけっこうあったりします。飛騨市も白川村(白川郷)も同様の意識が強い土地柄です。(たとえば飛騨市古川町の「古い町並み」は、住人たちが自主的にやっているだけで、保存条例とかなかったはずです。)
code:2026/06/16追記
ここちょっと飛騨を持ち上げすぎたな…という感じがあり、ちょっと追記します。
上記のような「自主的な取り組み」って、良く言えば「地元愛」だとか「景観への高い意識」なのですが、悪く言ってしまえば「同調圧力」でもあります。自分の土地や家でも、周囲の合意なしに勝手なことをできないという感じに。
あと、ひだしんの営業力の強さについては、飛騨の世間の狭さも関係していて、飛騨では知らない人同士でも、だいたい共通の知人はいたりして、要するに「知り合いの知り合い」ぐらいの距離の人間しかいない感じです。
なので、「知り合いの知り合い」に傍若無人な振る舞いってできなくて、他所から飛騨に移住した人間がクレーマーぽいムーブをしたときに、そこでだいたい地雷踏んで破滅するというのがあるのだけれど、そこまでいかなくても、身近な誰かの知り合いだから、営業にはちゃんと乗ってあげるのが基本マナーみたいな感じだったりして、そこもみんながさるぼぼコインを積極的に使おうとする要因なんだろうなと思っています。
なんかそんな感じで普及しているっぽいです。オワリ!
追記
そういえば自分もスマホにさるぼぼコインアプリ入れてました。正月に地元に帰省する際のバスを予約したら、特典として2,000円分ぐらいのさるぼぼコインがもらえたので、それでお土産買ったのでした。それ以降は使ってないけど……。(一応ひだしんの口座は持ってるけど休眠状態……)
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資料