量子力学Ⅰ
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朝永振一郎『量子力学Ⅰ』(みすず書房)読了(昨日)。古典物理学(Newton力学とMaxwell電磁気学)と観測結果との不一致から様々な仮説を検証する過程を経て量子力学が形づくられていく様子が丁寧に描かれており、学部での講義で疑問のまま終わっていた理論がかなり理解できたように思う。
本書は、朝永教授みずから第1版に綿密な検討を加え、多くの改訂・増補がなされたものである。
「量子力学の発展の真の精神を把握するのに驚嘆に値するほど成功しており、……量子力学を学ぶ学生すべてに推薦できる」(ウーレンベックの英語版に対する書評)ものとして、世界で広く認められている。
著者は、量子力学が形成される過程で、いろいろなタイプの物理学者が、それぞれの思考方法を用いて、自然が提示する謎を解いていく道筋を、いわば追体験することを重視し、これが最も勉強になるのだとして、その例を豊富に示している。
第1巻の本書は、プランクとアインシュタインの量子論の出発点から、ラザフォードの原子核の発見とボーアの原子構造論、対応原理を経てハイゼンベルクのマトリックス力学にいたる道筋が巧みに描かれている。
歴史的な形をとって記述が進められているにかかわらず、けっしていわゆる科学史によっているのではなく、多くの天才の考え方の秘密を明らかにするために素材を自己流に再編した、と著者は述べている。
それはまた、科学史というもののあり方についての、清新な示唆ともなっている。