図式と操作的確率論による量子論
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2023/5/?
2023/6/3
中平健治『図式と操作的確率論による量子論』(森北出版)読了。圏論的量子力学の流れを継ぎ、図式や操作的確率論を用いて古典論および量子論の基礎づけを行う非常に興味深い内容。特に図式は量子計算理論にも通じるものと思って期待したが、説明の主体は図式が有効であることを証明する数式であり、実際は読み通すのにずっと骨が折れた
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note
◆量子論の数学的構造を直観的に理解する◆量子論は、標準的な教科書では、ヒルベルト空間の言葉を用いて説明されていたり、解析力学などの物理学に関する知識を前提に説明されていたりと、その性質を直観的に理解するにはたくさんのハードルがあります。しかし、量子論のもつ性質そのものにフォーカスすれば、より直観的な理論展開が可能です。それが、本書で紹介する「図式」と「操作的確率論」によるアプローチです。図式によるアプローチは、オックスフォード大学のボブ・クックが中心となって提唱したもので、量子論のふるまいを直観的に記述できる言語として、現在、世界中で関心が高まっています。また操作的確率論(operational probabilistic theory)は、一般確率論(generalized probabilistic theory)ともよばれ、古典論と量子論を包括する洗練された理論体系として、量子情報分野で注目されています。本書では、この二つのアプローチを軸に、量子論の数学的構造を明らかにしていきます。
◆電子版が発行されました
◆詳細は、森北出版Webサイトにて
【目次】
第1 章はじめに
1.1 図式と操作的確率論
1.1.1 図式を用いると何がうれしいか?
1.1.2 操作的確率論に基づくと何がうれしいか?
1.1.3 図式と操作的確率論の例
1.1.4 図式と操作的確率論の歴史的経緯
1.1.5 異なる表現を用いることの利点
1.2 本書の構成
第2 章線形代数
2.1 線形代数の図式
2.1.1 基本的な用語
2.1.2 行列
2.1.3 行列の積
2.1.4 共役転置・複素共役・転置
2.1.5 正規行列とスペクトル分解
2.1.6 行列のテンソル積
2.2 凸錐
2.2.1 凸錐の定義
2.2.2 凸錐による大小関係
2.2.3 双対錐と自己双対錐
2.3 表現と同型
2.3.1 表現と同型の定義
2.3.2 凸錐の例
第3 章操作論と図式の基礎
3.1 古典論と量子論におけるプロセスの例
3.1.1 古典論の場合
3.1.2 量子論の場合
3.2 操作論の規則
3.2.1 プロセス・状態・エフェクト
3.2.2 プロセスの直列接続と並列接続
3.2.3 恒等プロセス
3.2.4 交換プロセス
3.2.5 まとめ:操作論の規則
3.3 操作論の性質
3.3.1 特定のプロセスを含むダイアグラム
3.3.2 プロセスのスカラー倍とスカラーの積
第4 章エルミート行列・半正定値行列が作る操作論
4.1 cup 列ベクトルとcap 行ベクトル
4.1.1 定義と基本的な性質
4.1.2 トレース・部分トレース・部分転置の図式
4.1.3 テンソル積空間におけるcup 列ベクトル
4.2 格上げと格下
4.2.1 行列の列ベクトルによる表現
4.2.2 シュミット分解
4.2.3 内積の図式
4.3 複素行列全体からなる空間
4.3.1 複素行列全体からなる複素ヒルベルト空間
4.3.2 複素行列に対する線形写像
4.3.3 格上げ・格下げに関する雑多な話題
4.4 エルミート行列全体からなる空間
4.4.1 エルミート行列全体からなる実ヒルベルト空間
4.4.2 エルミート保存な写像
4.4.3 正値写像とCP 写像
4.4.4 エルミート行列が作る操作論
4.4.5 半正定値行列が作る操作論
4.5 格下げと2 重化による表現
4.5.1 エルミート行列の表現
4.5.2 エルミート保存な写像の表現
4.5.3 エルミート行列全体からなる空間に関する高度な話題
コラム 実エルミート行列全体からなる空間
第5 章量子論の数学的構造
5.1 確率の概念を備える操作論
5.1.1 古典論・量子論に関する表記法
5.1.2 確率の概念を備える操作論における要請
5.1.3 測定
5.1.4 テスト
5.1.5 実現可能なプロセスのみからなる理論
5.2 古典論
5.2.1 古典論の定義
5.2.2 古典論の確率的な解釈
5.2.3 古典操作論の別の定義
5.2.4 ベクトル表現と行列表現
コラム 列ベクトルが作る操作論
5.3 量子論
5.3.1 量子論の定義
5.3.2 量子論の定義や捉え方に関する本書の立場
5.3.3 量子論の確率的な解釈
5.3.4 標準的な量子論の用語との対応関係
コラム 実半正定値対称行列ではダメなのか?
第6 章操作的確率論の基礎
6.1 テストと因果関係
6.1.1 テスト
6.1.2 実現可能なプロセス
6.1.3 プロセス間の因果関係
6.2 プロセスと確率の関係
6.2.1 プロセスを施す確率
6.2.2 放棄エフェクト
6.2.3 実現不可能なプロセス
6.2.4 テストと確率
6.2.5 測定
6.2.6 観測者に依存する確率
6.3 プロセスの等価性と局所等価性
6.3.1 プロセスの等価性
6.3.2 状態の等価性
6.3.3 エフェクトの等価性
6.3.4 プロセスの局所等価性
6.3.5 可逆プロセス
6.4 プロセスの和
6.4.1 プロセスの和の定義
6.4.2 プロセスのスカラー倍や和に関する性質
6.5 プロセスの拡張
6.5.1 プロセス空間が張る実ベクトル空間
6.5.2 拡張プロセス
コラム なぜ標準的な量子論では状態を実列ベクトルで表現しないのか?
6.6 まとめ:操作的確率論における要請
第7 章操作的確率論の性質
7.1 プロセス空間と凸錐
7.1.1 プロセス空間は突凸錐
7.1.2 プロセス空間の性質
7.1.3 正規状態・正規純粋状態全体からなる空間
7.2 完全識別可能な状態の組
7.2.1 エフェクトの反応
7.2.2 PDS とMPDS
7.2.3 系のランク
7.2.4 MPDS と極大測定の例
7.2.5 古典系および量子系の状態空間
7.3 確定的なプロセスと実現可能なプロセスの性質
7.3.1 テストと確定的なプロセス
7.3.2 実現可能なプロセス
7.3.3 ゲージ関数とノルム
7.3.4 テストを表すプロセス
7.4 雑多な話題
7.4.1 複数の観測者がいる場合のダイアグラム
7.4.2 確率の解釈について
7.4.3 複素ヒルベルト空間の背後に隠れた量子論の本質的な構造や性質とは何か?
7.4.4 量子論および広義量子論の特徴
第8 章量子論の性質
8.1 プロセスのChoi 状態による表現
8.1.1 cup 状態とcap エフェクト
8.1.2 Choi 状態
8.1.3 プロセスとChoi 状態との関係
8.2 プロセスの基礎
8.2.1 プロセスの随伴・複素共役・転置
8.2.2 プロセスのシュタインスプリング表現
8.2.3 プロセスの例
8.2.4 量子テレポーテーション
8.2.5 直列接続の別表現
8.3 もつれと相関
8.3.1 もつれ状態
8.3.2 ベル非局所相関と操縦可能性
8.3.3 ウィットネス
8.4 ロバストネスとその応用
8.4.1 ロバストネス
8.4.2 プロセス識別問題
8.4.3 状態識別問題
付録A 線形代数の基礎
A.1 ベクトル空間
A.1.1 ベクトル空間の定義
A.1.2 基底
A.1.3 線形写像
A.2 ヒルベルト空間
A.2.1 ヒルベルト空間の定義
A.2.2 CONS
A.3 正規行列とスペクトル分解
A.3.1 正規行列とその分類
A.3.2 正規行列の関数
A.3.3 スペクトル分解の拡張:特異値分解
A.3.4 スペクトル分解と特異値分解の証明
A.4 エルミート行列・半正定値行列・ユニタリ行列
A.4.1 エルミート行列の性質
A.4.2 半正定値行列・正定値行列の性質
A.4.3 ユニタリ行列の性質
A.5 凸集合・ノルム・ゲージ関数・内積
A.5.1 凸集合
A.5.2 ノルム
A.5.3 ゲージ関数
A.5.4 内積
A.6 テンソル積
A.6.1 ベクトル空間のテンソル積
A.6.2 ヒルベルト空間のテンソル積
A.6.3 線形写像のテンソル積
A.6.4 複素共役・転置の図式に関する注意点
付録B 図式での表記
付録C 操作的確率論と量子論の対応関係
参考文献
索引