「ゲームデザイナーに聞きたい5つの質問」に応えました
事前に5つの質問をいただいておりましたので、
このときにお応えした内容と補足をここに記します。
問1. 「ボードゲーム」のココがすき!どこ??!
A. 「言葉を保留できるところ」が好き
例えば将棋を思い浮かべてもらえるとわかりやすいかもしれない
その一手がコミュニケーションの代わりとなる
いわゆる「コミュ力」とは別の側面に、ボードゲームが光を当ててくれる
語彙が豊富ならば、弁が立てば、声が良ければ、評価されるのは一面的に過ぎはしないか。
もちろん言葉も大切で、そのために努力を続けてきた人もいるから、それも評価しなくてはならない。
現実とは相対的に、別の側面にも光を当ててくれるという点が、個人的にボードゲームの良さの1つだと思っている
問2. 人生最推しボードゲームは?(自主製作除く。他サークル作品はOK)
奥能登伝統遊戯
たった32枚の駒(カード)さまざまなドラマが起こるミニマム性
展開がのんびりしたり急加速したり。『雅々(がが)』でも、この『ごいた』のテンポ感を参考にした。 簡単な確率計算とガチャ感に加えて、人間のアナログな感覚がゲームに持ち込まれざるを得ないルールデザインが、とても気に入っている。
初めて遊ぶ人が混じっても、彼/彼女が勝てる点もとてもいい
相方とアイコンタクトし合って何かが通じ合った瞬間は脳汁が出る
問3. ボードゲームを「つくろう」と思ったきっかけは??
A. コロナ禍
既存の仕事が一部無くなってしまったり、停止したりして、良くも悪くも時間ができた。
ステイホームとなり、家族や身内同士で篭って楽しめる何かを提供できないものかと考えた。
問4. ボードゲーム製作、「何」が大変!??(テーマ作り、デザイン、コンポーネント等)
A. 「残っていいのか?」と「自由」の検討
作者の手を離れて、世界性をつくる(あるいは、つくられてしまう) 著者 author の、権威 authority が宿らざるを得ない
提示するルールはもちろんのこと、その工作物のために選んだ色・フォント・形・言葉すべてに権威が潜んでしまう。
たとえどんなに「自分なんて…」と自身の価値を低く評価しても、自身の存在や影響力をゼロにすることはできない
そもそも黙談は、沈黙の状況でも影響し合える(し合えてしまう)現象自体をゲームとしているのだから、作者である自分自身が自身の影響から逃げるわけにはいかないだろう
『ザ・クルー』のルールブックに、「通信しないこともコミュニケーションの一つだよ」的なことが書いてあったが、それともフラクタルに地続きな話かもしれない この自分の作ったボードゲームという工作物は、例えば自分が死んでもこの世界に残り続けていいものなのか?という自問
買っていただいた方の数や、ヒットしたかはここではまったく関係のない話
工作物としてこの世界に作られたものは、世界性を構成することは避けられない
それってけっこう怖いことだと思う
一方で、遊びはルールを好き勝手に広げられてこそ遊びなのだと思っている デジタルゲームは、ルールを遊び手の都合で気軽に書き換え難い。
プログラムコードをハッキングすれば可能だけども。あるいは、
マインクラフトやゼルダのブレワイはこの辺りに挑戦していると思うが、ここではまた別の話。
世界性を構成してしまうから、ルールで縛りたくなる力が自分の中に働く。しかし、ルールを破ってもらえるデザインをしたい。
そこにあるルール・規則は、どのくらい破りやすいデザインになっているか?の検討がとても大変。
下手をすると遊び手の自由を、奪ってしまう。それは避けたい。
問5. 空葉堂さんのボードゲーム、「ココ」を見てほしい!こだわりポイントは?! A. 「いつ」感
「いつ、どのタイミングで?」を感じられるところを見てほしいです。
言葉以外のこと(いわゆるノンバーバル)にも、ジェスチャー・表情・声などいろいろあるけれど、その中でも間のデザインに特徴があるのが、『雅々(がが)』や黙談.iconだと思っています。 雅々でいえば、
「いつ」、みやびに行くのか?
これを考えるためには他のプレイヤーの状況(表情、身体動作、手札枚数など)に気を配っていなければならない 「いつ」、おみごとと口に出すのか
あと1ターンで勝てたのに!どういう状況で、相手を(たとえ本音ではないとしても、言葉として)褒め称えるための言葉が、どんなタイミングで口から出てくるか。 その妙がその人らしさを突如形作るように感じられる。
黙談は、すべてが「いつ」や「タイミング」の世界。
木製ピースを渡す瞬間はもちろん、
顔を上げる、目線を交わす、手が動く、笑う、無表情となる、微動だにしない、すべてがメッセージでありすべての変化に「いつ」がつきまとう
瞬時のことは、例えば、グッと足を踏み出す瞬間、あるいはスッと手を挙げる瞬間、あのぅ…と声を変える瞬間など「今だ!」というときがある
「いつ」感が問われるこの瞬時の動作や発話は、ゲームの勝ちとか負けという結果を超えて、言葉以上に複数性をつくる、あるいは維持する。