〈制作〉によって世界性がつくられる
〈制作〉 = Herstellen
どちらもアーレントによる術語としてここでは書いている。 アーレントは〈人間〉の活動的生活を支える活動力を
〈労働〉
〈制作〉
〈活動〉
の3つに分類されるとした。
その語の一般的な意味を超えたアーレント独特の意味が付与されるので〝〈 〉〟をとりあえずつけている。
〈人間〉も、一般的な意味での人間ではない。
「ボードゲームを作ること」は、〈制作〉に相当する。
〈労働〉は、パンやオムレツといった消費物をつくる。 使ったら(食べたら)消えて無くなる。
ヒトという動物としての生命円環の一部を成す。リズムがある。 〈制作〉は、詩やテーブルといった耐久財をつくる。
ヒトが避けられない生と死の円環的な時間から離脱して、永遠性を獲得する。
複数性 = plurality
ただ単に複数存在している状態ではない
複数性がある事態とは。
独自の個性を持った人々が、
各自の個性という差異があるにも関わらず、
同じ人間として平等であることを保ちながら
他の多くの人々と共存できる事態。
語り始めること。
黙談.iconならばピースを渡すこと。
ボードゲーム会を催すこと。
会の中で、「このゲームをやりませんか?」と持ちかけること。
〈活動〉だけでは何も始まらない。
複数性は、人と人の間に「間 in-between」の空間があることを前提に成立する。
「間 in-between」の空間は、〈制作〉された人工物によって確保される。
〈制作〉によって耐久性を得たボードゲームが「間 in-between」を構成し、人々が「何かを始めること」が可能になる。
(...)「公的(パブリック)」という用語は、世界そのものを意味している。なぜなら、世界とは、私たちすべての者に共通するものであり、私たちが私的に所有している場所とは異なるからである。しかし、ここでいう世界とは地球とか自然のことではない。地球とか自然は、人びとがその中を動き、有機的生命の一般的条件となっている限定的な空間にすぎない。むしろ、ここでいう世界は、人間の工作物や人間の手が作った製作物に結びついており、さらに、この人工的な世界に共生している人びとの間で進行する事象に結びついている。世界の中に共生するというのは、本質的には、ちょうど、テーブルがその周りに坐っている人びとの真中(ビトウイーン)に位置しているように、事物の世界がそれを共有している人びとの真中にあるということを意味する。つまり、世界は、すべての介在者(イン・ビトウイーン)と同じように、人びとを結びつけると同時に人びとを分離させている。
ハンナ・アーレント『人間の条件』pp.78f.