キーワード:副産物
https://scrapbox.io/files/63084d05fe913300239f6503.png
目的に到達しようとする努力が生み出す、当初の目的に収まらないもろもろの帰結は副作用(side-effect)や副産物(by-product)などと呼ばれる。こうした付随的な効果は目的によってもたらされる一方で、それ自体として目的化できないという逆説を抱えている。だからこそ、目的地を目指した道のりの周縁に浮かび上がる作用や産物を回収するのは、大抵の場合、未来の自分でなければ、遅れてやってくる他者なのだ。十年越しの努力にも関わらず実現に至らなかった《IEIE》は、しかしながら、その過程において豊かな副産物を多く生み出した。2019年にクナーヴェルシェア島をジュリー・マーティンや中井が再訪したことが思わぬ形で日本でのイベントに繋がり、そのイベントの予想外の帰結として札幌を拠点に三年越しのプロジェクトをはじめることになった。いつしか、一度も上演されなかった幻の作品の実現を追い求めることが生み出す副産物の連鎖自体が《Island Eye Island Ear》という息の長いパフォーマンスの本性だという感じがプロジェクトに携わる人たちのなかで広がっていた。そもそもチュードアたちが半世紀前に追い求めた「隠れた自然=本性(occult nature)」とは、知覚の周縁においてのみ露わになる、ある種の副作用だったのかもしれない。
https://www.selout.site/jp