キーワード:ヴァーチャル・グランド
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電子工学において「ヴァーチャル・グランド(仮想接地)」とは、ある回路内の電圧を計算する際の基準(0V)となる電位に、実際には繋がれていないものの、実質的にはそのように見なせる回路部分の呼び名である。とはいえ、回路の振る舞いを考えるにあたってなにが実際(アクチュアル)でなにが実質(ヴァーチャル)なのかは一筋縄ではいかない問題だ。そもそも基準電位が「グランド」と呼ばれること自体、地球の大地が基準点とされることが多かったためだが、原理的には回路内で統一できれば——計算がうまく行き、見通しがつくのであれば——どの部分も基準点と見なすことができる。つまり、「グランド」とはそれとの関係において他の部分が計測される回路の落としどころを指すメタファーであり、その意味においてあらゆるグランドとはそもそもヴァーチャルだとも言える。デーヴィッド・チュードアはよく電子回路の原理を取り出してより大きなスケールの現実に拡大することで制作のアイデアを得ていたが、実際には違うものを実質的には同じと見なせることが思わぬ見通しを与えてくれることもあるのだ。