マクルーハン
未来とはバックミラーにうつった過去である
マクルーハン理論の根底には、副題にも示されている通り「拡張」という概念が重要なキーワードとして据えられている。マクルーハンはテクノロジー、そしてその同義語としてのメディアはすべて人間の肉体器官の拡張と考えた。逆に言えば肉体的な機能の拡張として捉えられる技術はすべてメディアなのであり、『メディア論』のなかでは衣服・自動車・兵器までもが同様にメディアとして章立てされている。テレビを代表とする電子メディアは中枢神経の拡張として、あくまでそうしたメディアの一部として並列に扱われている。「メディアはメッセージである」という有名な言葉はここで誕生した。人々はメディアが発する内容にとらわれがちだが、メディアが現実を違ったかたちに再構成するものであるとすれば、形式、構造、フレームにこそ目を向けるべきだという主張が込められている。ほかに、データの密度が高く受け取り手の参与度が低い「ホットなメディア」と、受け取り手の参与度がより高い「クールなメディア」というのも、『メディア論』において示されたマクルーハン独自の分類として挙げられる。