ブロック化
世界における自由経済というものがなくなっていく可能性がある
ウクライナ問題が世界経済に及ぼす重要な変化は、世界中から欲しい物を買えるグローバル化の流れが、欲しいものを買いにくい「ブロック化」へ変わり始めていることだ。 欧米諸国とロシアが分断されること=ブロック化によって、世界の人々は欲しいものを自由に買うことが難しくなる。供給が制約されることで、世界全体でモノの値段は上がりやすくなる。特に、ロシア産が高い割合を占めるエネルギーや希少金属などの価格が上昇しやすくなる。コストアップによって企業の効率性は低下し、景気が減速する国は増える。
もう一つ見逃せないのは、物価の上昇によって、今までのような金融緩和を継続できなくなることだ。そうなると、景気が下落しても、金融政策にできることは限られる。ウクライナ問題の今後の展開によっては、物価が上昇すると同時に、景気が下落する、「スタグフレーション」と呼ばれる厳しい状況に追い込まれる可能性がある。 今後もロシアがウクライナに対する強硬姿勢を崩さないのであれば、事態は深刻さを増すだろう。世界全体で供給のボトルネックは一段と深刻化し、需要を満たすことは難しくなるだろう。 中長期で考えると、各国企業は根本からサプライチェーンを見直し、組み立て直す必要がある。天然ガスや、自動車の排気ガス浄化などに使われる希少金属のパラジウム、穀物などの調達を、ロシア以外の国へ切り替える企業が増えるだろう。 こうなると、主要国の中央銀行は緩和的な金融政策を継続できなくなる。米連邦準備制度理事会(FRB)は早急に金融政策の正常化、さらには引き締めに動くだろう。欧州中央銀行など、これまでは金融政策の正常化に慎重な姿勢を示してきた中央銀行も、急速に政策スタンスの転向を余儀なくされるはずだ。