NVIDIA
工場を持たず、設計に特化している「ファブレス」半導体企業の米エヌビディアは、AIに命運を賭けている。 元々はゲーム向けにGPU(画像処理半導体)を開発したが、GPUはAIタスクの実行に最適であることが判明した。そこで、今では「A100」「H100」などのAI用GPUや、生成AIアプリケーションの開発に必要なソフトウエアのインフラの提供に力を入れている。
https://scrapbox.io/files/66875ed9305056001db6cb75.png
エヌビディアは当初はゲーム用GPUを手掛けていたが、今やAIインフラとアプリケーションで支配的な地位につけている。
主な大規模言語モデル(LLM)の学習に使うGPUの設計から、生成AIソフト開発ツールの構築まで、現在のAIブームのあらゆる重要な面に密接に関与している。24年2〜4月期決算の説明会では、自社をエンドツーエンドの「AI工場」のインフラプロバイダーと位置付け、ハードとソフト、システム統合の能力を強調した。 24年4月には、AIモデルの開発・実行コストの削減を支援するスタートアップ、ラン・エーアイ(Run:ai、イスラエル)とDeci(イスラエル)を計約10億ドルで買収し、自社GPUの効率を改善したと報じられた。ラン・エーアイは顧客企業の計算インフラの管理と最適化を、Deciは開発者によるAIモデルの構築、最適化、展開を支援する。 自ら判断して動く「AIエージェント」や生成AIを活用した業務支援ソフト「コパイロット」など業界横断型のAIアプリケーションにも力を入れている。23年にはプログラムコードを生成できるAIエージェントを開発する米インビュー(Imbue)のシリーズB(調達額2億ドル)に参加した。その数カ月後には、銀行やヘルスケア、小売りのバーチャルアシスタント導入を支援する米コア・エーアイ(Kore.ai)のシリーズD(1億5000万ドル)に出資した エヌビディアは数年前、建築、建設、製造などの業界でデジタルツインの構築に活用できる基盤「オムニバース」を発表した。それ以降、産業分野での存在感を高め、大規模なデータセットや高度なシミュレーションが必要なアプリケーションに力を入れている。
スウェーデンのヘキサゴン(Hexagon)は23年6月、自社プラットフォームとオムニバースを接続してリアリティーキャプチャーやシミュレーション、仮想モデルの作成などができる産業用デジタルツインを開発するため、エヌビディアと組んだ。
こうした取り組みを足がかりに、トヨタ自動車はエヌビディア及び米レディ・ロボティクス(READY Robotics)と共同で、シミュレーションを活用したアルミニウム熱間鍛造生産ラインのプログラミングシステムの構築に取り組んでいる。
エヌビディアとシーメンスは24年、写真のようにリアルな3次元(3D)画像の産業用メタバースを構築する取り組みを拡大すると発表した。
エヌビディアはさらに、複数の産業ロボット開発企業に出資している。
・23年10月にはロボットとAIを融合し、高度な複合材料や金属製品の製造を支援する米マキナ・ラボ(Machina Labs)に出資した。
・24年2月には、ヒューマノイド(ヒト型ロボット)を開発する米フィギュアAI(Figure AI)のシリーズB(6億7500万ドル)に参加した。
・その数カ月後には、エヌビディアのGPUを搭載したレーザー除草ロボットを開発する米カーボン・ロボティクス(Carbon Robotics)に出資した。