MSCHF
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NY中心に活動するプロジェクト集団・アートコレクティブ
作品として
サタン・シューズ(Satan Shoes)
MSCHEFとは、ニューヨーク・ブルックリンを拠点に活動するアート・コレクティブ「MSCHF(ミスチーフ)」のことです。2019年より本格的に活動を開始し、政治や貨幣経済といった現代社会のシステムの不合理性や矛盾を暴き出し、シニカルなユーモアを用いて表現するコンセプチュアルなアート作品を制作してきました​ GQJAPAN.JP 。創設メンバーにはルーカス・ベンタル(Lucas Bentel)やケヴィン・ワイスナー(Kevin Wiesner)などRISD(ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン)出身者が名を連ねており、彼らは当初から既存のアート界に頼らずインターネット上の幅広い層に直接訴求することを目指していたといいます​ ARTNEWSJAPAN.COM 。実際ベンタルは「ギャラリーの空間には収まらないものを作りたい」と述べ、ギャラリーやキュレーターが支配する世界に背を向けてより広いネット上の観客からフィードバックを求める方針を語っています​
MSCHFの実質的な創設者でCEOであるガブリエル・ウェーリー(Gabriel Whaley)は元BuzzFeed社員という経歴を持ち、ネット上で話題を生むプロジェクトを得意としていました​ 。彼の発案で2016年にMSCHFがスタートし、2018年頃からは約2週間ごとに新作を世に送り出す「ドロップ」方式を採用して急ピッチでプロジェクトを展開しました​ HIGHSNOBIETY.COM ​ ARTNEWSJAPAN.COM 。初期のMSCHFは広告企業のようにも見られており、その制作物に一貫した様式がないため外部からはブランドなのか企業なのか正体の掴みにくい存在でもありました​ ARTNEWSJAPAN.COM 。しかしそうした型破りな運営ながら、アートコレクター達は早くもMSCHFに注目し作品を入手しており、実業界の支援(2020年までに約1150万ドルの資金調達​ EN.WIKIPEDIA.ORG )も受けつつ独自路線を突き進んできました。
アート作品と活動の特徴 MSCHFの活動の大きな特徴は、作品の形式やジャンルに統一性がない点です​ ARTNEWSJAPAN.COM 。スニーカーのカスタムからデジタルサービス、インスタレーションや彫刻作品まで、彼らのプロジェクトは多岐にわたります。また非常に短いサイクルで次々と新コンセプトを発表する俊敏さも際立っており、創設以来おおよそ隔週ペースで新作を公開し続けています​ ARTNEWSJAPAN.COM 。以下にMSCHFの代表的なプロジェクトの例を挙げます。
《ジーザス・シューズ (Jesus Shoes)》(2019年) – ナイキのスニーカーに聖水を注入し限定発売したカスタム靴。価格は1425ドルで、これはイエス・キリストが水の上を歩いたという聖書マタイ14章25節(14:25)にちなむ数字でした​ ARTNEWSJAPAN.COM 。カトリック教会への信仰と高額な限定スニーカーを追い求めるハイプビースト文化の両方を風刺した作品ですが、皮肉にもスニーカーヘッドたちには熱狂的に受け入れられました​ ARTNEWSJAPAN.COM 。
《サタン・シューズ (Satan Shoes)》(2021年) – ラッパーのリル・ナズ・Xとのコラボで製作した人間の血液1滴入りの改造ナイキ靴。666足限定で発売され、宗教的モチーフと過激さから良くも悪くも大きな論争を呼びました​ ARTNEWSJAPAN.COM 。発表直後には米サウスダコタ州知事クリスティ・ノームが「我が国の魂のために戦う」とツイートで非難し​ ARTNEWSJAPAN.COM 、商標無許可使用を理由にナイキ社から訴訟を起こされる事態にも発展しました(最終的には和解)​ ARTNEWSJAPAN.COM 。
《ウェービー・スニーカーズ (Wavy Sneakers)》(2022年) – エアジョーダン1、アディダス・スーパースター、コンバース・チャックテイラーなど複数ブランドの人気スニーカーを、ソール部分が波打つ形状に歪めたカスタム作品シリーズです。商標で守られたロゴやデザインも形を変えればどこまで有効なのか?という悪戯めいた批評性を提示したもので​ FASHIONSNAP.COM 、実際にVANS社は自社のスニーカーを「波状化」されたことに異議を唱えてMSCHFを提訴しています​ ARTNEWSJAPAN.COM 。 《ビッグレッドブーツ (Big Red Boots)》(2023年) – 手塚治虫の漫画『鉄腕アトム』に登場する赤いブーツを彷彿とさせる、極端に丸みを帯びた赤い長靴型の作品です。まるでアニメのキャラクターが履く玩具のようなこのブーツはSNS上で爆発的な話題となり、多くのインフルエンサーや有名人までもが面白がって着用写真を拡散しました​ FASHIONSNAP.COM 。奇抜なファッションアイテムとしてストリートでも注目を集め、限定販売分は即完売する人気商品にもなりました。
《スポットの大暴れ (Spot’s Rampage)》(2021年) – Boston Dynamics社製のロボット犬「スポット」に遠隔操作できるペイントボール銃を取り付けたインスタレーション作品です。参加者がオンラインでロボット犬を操作し、白い空間内でペイント弾を乱射できるという内容で、ロボット技術の軍事転用に対する風刺として制作されました​ ARTNEWSJAPAN.COM 。この挑発的な企画に対し、ロボット開発元のBoston Dynamics社は多数の停止通告書を送り、果てはロボットを遠隔ハッキングして動作不能にする措置まで講じています​ ARTNEWSJAPAN.COM 。それ自体がロボット産業側の過敏な反応を暴く結果となりました。
《切り離された点 (Severed Spots)》(2022年) – イギリスの現代美術家ダミアン・ハーストの版画作品《Flumequine(フルメキン)》(2007年)を4万4000ドルで購入し、そこに描かれた多数の色とりどりの点を一つずつくり抜いて個別の作品として販売したプロジェクトです。切り取られ点だけになった元の版画の枠部分も含めて売り出され、点1個あたり4400ドル、枠は7万5000ドルという価格設定でした​ ARTNEWSJAPAN.COM 。巨匠のアートを部品に分解して商品化するこの試みは、「アート作品とは何か」「その価値はどこにあるのか」という問いを突きつけています​ ARTNEWSJAPAN.COM 。
《Celebrity iPhones》(2022年) – セレブリティ(著名人)たちの電話番号が実際に保存されたiPhone端末を額装し、美術作品化したシリーズです。メディアによってノンストップで煽られる群集心理的な欲望(有名人のプライベートに触れたいという好奇心)と、個人情報保護という相反する要素を同時に表現した作品となっています​ FASHIONSNAP.COM 。
《銃を剣へ (Guns2Swords)》(2021年) – 銃規制への問題提起として行われたプロジェクトです。銃の自主回収プログラムを独自に実施し、提供された銃火器をMSCHFが受け取って溶解し、日本刀のような刀剣へ鍛造し直して元の持ち主に送り返すというパフォーマンスでした​ ARTNEWSJAPAN.COM 。凶器を文字通り別の象徴的な物体へ「鍛え直す」ことで、アメリカの銃文化に対する強い風刺となっています。
思想・コンセプト
MSCHFの創作の根底にある思想は、現代の消費社会や文化に潜む不条理や欺瞞を暴き出し、人々に思考を促すことです。彼らは人類の文化・宗教・政治から資本主義経済に至るまで、あらゆるシステムの滑稽さや矛盾を精密に計算された「介入(インターベンション)」によって浮き彫りにしようとしています​ 。
その表現は急進的かつアイロニカル(皮肉的)であり、ユーモアやジョークを交えつつ社会批評性の強い作品が多いのが特徴です​ 。たとえば上述の《ATMリーダーボード》では、美術品の価値と金銭の問題をユーモラスに扱いながら、人々に「自分の銀行残高を公衆に晒す覚悟があるか?」と自己問答させる仕掛けになっていました​ 。このように観客自身の心理や社会の暗部を露呈させる作品によって、人々の自己欺瞞をも暴くことを狙っています​ ARTNEWSJAPAN.COM 。MSCHFの作品は単なるオブジェではなく、見る者の行動や反応を引き出すことで初めて完成するというインタラクティブな性質も備えています​ ARTNEWSJAPAN.COM 。 MSCHF自身は自らの活動をアートの文脈に位置付けつつも、伝統的な美術業界とは距離を置いてきました。共同創設者のベンタルは「大学で作っていたタイプの作品とはまったく異なるものを目指し、ギャラリーの空間には収まらない作品を作りたかった」と述懐しており、ギャラリストやキュレーターに支配された世界ではなくインターネット上の一般観客との直接的なエンゲージメントを重視したと語っています​ ARTNEWSJAPAN.COM 。実際、MSCHFは創設当初から「既存のアート界には関わらない」という方針を掲げ、まずはネット上でバイラルに作品を広める道を選びました​ ARTNEWSJAPAN.COM 。これは裏を返せば、「アート作品は美術館やギャラリーだけのものではなく、大衆文化の中で生きてこそ意味を持つ」という信念の表れでもあります。 またMSCHFは、美術そのものが巨大ビジネスと化している現状にも批判的な視点を持っています。ベンタルとワイスナーは、自分たちが奇抜なスニーカーを販売しているからといって「セルアウト(商業迎合)した」わけではなく、むしろその収益によって本質的なアートプロジェクトに投資できるため自分たちの運営は「正直」だと語っています​ ARTNEWSJAPAN.COM 。彼らは「現代の有名アーティストの中には何百人もの従業員を抱える大企業のような存在もいるが、MSCHFの在り方はそれとは真逆だ」とし、ダミアン・ハーストを例に「彼の作品はすべてハースト個人の名でアートとされているが、その実態はビジネス大量生産だ」という趣旨の発言もしています​ ARTNEWSJAPAN.COM ​ ARTNEWSJAPAN.COM 。そうした問題意識から、前述のようにハースト作品を素材として再構成・販売する《Severed Spots》を繰り返し行い、「アートと商品の境界」を露骨に示すプロジェクトを敢行したのです​ ARTNEWSJAPAN.COM 。 「MSCHF」という名称自体、英語の miscellaneous mischief(種々雑多ないたずら)に由来し、その名の通り体制や権威への挑発的ないたずら精神がグループの哲学に貫かれています​ ARTNEWSJAPAN.COM 。メンバーたちはまるで「創作のアスリート」のように次々と作品を生み出し続けるスタンスをとっており、ブラッド・トロメルが提唱した*「Aesthlete(エスリート)」(美学のアスリート)*という概念を体現しています​ ARTNEWSJAPAN.COM 。実際にMSCHFは創設以来、一貫して高速ペースで作品を量産し続けており、その絶え間ない創作意欲こそが現代社会への批評そのものでもあります。常識を打ち破るアイデアと行動力で「アートとは何か」「価値とは何か」を問いかける彼らの姿勢は、現代アートの新しいあり方を示すものと評価されています。
https://artnewsjapan.com/article/587
《ATMリーダーボード》(2022)を利用すると、利用者の銀行口座の残高が公開されるという仕組み。ATM製造会社から譲り受けたATMに、「リーダーボード」の文字をあしらった画面とカメラを取り付けたこの作品にデビットカードを挿入して暗証番号を入力すると、カメラが利用者を撮影し、口座残高が画面に点滅する。そしてアニメーションで、参加者が裕福であるかそうでないかを表示するのだ。 ARTnewsの記者がカードを入れると、お金が詰まったトイレのアニメーションとともに大きな青い文字で「 さよなら!(BYE!)」と表示された。
誰も使用していない時は、画面にこれまでの利用者の口座残高と写真がランキング形式で表示される。取材時はピンクのTシャツを着た若い男性が1位で、彼の残高は約200万ドル(約2億7000万円)だった。さらに下にスクロールされていくと、1.75ドル(約240円)の人が出てきた。
人々がこの作品を前にすると、それが何であるか、何をするものであるかを理解し、「自分の銀行口座にいくらお金があるのか、それを皆に本当に知ってもらいたいのか」と自問しなければならない。その一連の行動がショーなのだ。プレビューに出席したあるVIPは、顔を出すのに抵抗があるため、MSCHFのメンバーにカードの運用を代行してもらったそうだ。
MSCHFのアーティスト、ケヴィン・ワイスナーによると、よくあるのは、4人くらいのグループで一緒に機械に近づき、1人は覚悟を決めてカードを入れるものの、いざ機械を前にすると「やっぱり......ダメかも」と躊躇してしまうケースだそうだ。そして、おそらくその判断は正しい。なぜならば、第三者による審判が必ずやってくるから。ATMを通りかかった人が画面を見て、「ああ、あの人はもっと貯金すべきだ......」と言っているのを聞いたとワイスナーは明かす。
また、MSCHFのリズ・ライアンは、「カードを挿入するか否かにかかわらず、誰もがその瞬間を味わうことができるのがこの作品の面白いところ」「利用者には『本当にやっていいのか』と内省する間が見られる」という。
https://artnewsjapan.com/article/555
MSCHFが手がけたものの中でも特に知られているのは、リル・ナズ・Xとのコラボレーションで良くも悪くも話題となった《サタン・シューズ(Satan Shoes))》だろう。ナイキ(NIKE)のシューズを無許可でカスタマイズし、赤いソール部分に人間の血を1滴入れたというものだ。2021年にこれが発表されると、保守派として知られるサウスダコタ州のクリスティ・ノーム知事はツイッター上で「我が国の魂のために戦う」と怒りを露わにし、愛国ムードをあおるきっかけとなった。FOXニュースでは、どこかのデザイナーがリメイクしたものだとも伝えられていたが、実際にこれを作ったのがMSCHFだった。
2016年にスタートしたMSCHFは形容しがたいコレクティブだが、アーティスト集団として話題になったことはこれまでほとんどない。
MSCHFの創設メンバーのひとり、ルーカス・ベンタル(Lucas Bental)は、「これはおかしな話。私たちはこれまでずっと、自分たちの活動をアートの文脈で捉えてきた」と語る。
ベンタルと共同創設メンバーのひとりであるケヴィン・ワイスナー(Kevin Weisner)は、2010年代初頭にロードアイランドデザイン大学(RISD)で出会った。どちらもブラウン大学の複数学位取得プログラムに加わっており、ベンタルは音楽、ワイスナーは材料工学を学んでいたという。その後RISDを離れ、共同でMSCHFを立ち上げることになる8人のメンバーと集まった際に、2人は既存のアート界には関わらないという方針を決めた。それでも、アートコレクターたちはもう何年も前から彼らに注目し、その作品を手に入れてきた。
「ギャラリーの空間には収まらないものを作りたいと考えてきた。大学で作っていたタイプの作品とはまったく異なるものを目指していたから」とベンタルは振り返る。これはつまり、ギャラリーの運営者やキュレーターが支配する世界に背を向け、より広い層、すなわち良きインターネットユーザーにエンゲージメントやフィードバックを求めるということ
ポスト・インターネット時代のアートコレクティブであるDISや、ブラッド・トロメルのような、ウェブ2.0の混沌を現実社会に持ち込もうとしたアーティストなどがそうだ。ベンタルとワイスナーは、トロメルがアメリカの非営利メディア『The New Inquiry』に寄稿した記事「アスレティックな美学(Athletic Aesthetics)」を必読と呼び、敬意を隠さない。
実のところ、トロメルもDISも、実際にはアート界に向けて継続的に作品を制作していた。これに対しMSCHFは、トロメルが掲げた「エスリート」(「エステティック=美学」と「アスリート」をつなげた造語)というコンセプトを忠実に実践している。エスリートは、次から次へと作品を生み出し死ぬまで休もうとしない人のことだが、MSCHFは創設以来、2週間ごとに新しい作品を「ドロップ」してきた。
《銃を剣へ(Guns2Swords)》(2021)では、MSCHF流の銃の買取プログラムを実施した。銃の所有者がそれをMSCHFに送ると、受け取ったMSCHFはこれを溶かして刀剣に作り替え、持ち主に送り返すというものだ。《スポットの大暴れ(Spot’s Rampage)》(2021)では、ボストン・ダイナミクス社製のロボット犬「スポット」に、ペイントボールを発射するガンを取り付けた。MSCHFはこのロボット犬をオンライン経由で人々がリモート操作できるように設定した。ペイントボールが発射されることで、スポットが置かれた真っ白な立方体の空間に色がつけられていくという仕掛けだ。
《あらゆる人にキーを(Keys4All)》では、MSCHFはクライスラーの乗用車PTクルーザー1台に5000個の合鍵を作り、これを販売した。この鍵を持っている人なら、だれでもこの車を運転できる。ただしこれには、鍵が合致する車両を見つけられれば、という条件がつく。現時点でこの車は、ニューヨークからカリフォルニアまで全米を縦断したところだという
「多くの人は、『この作品はずいぶんメディアで取り上げられた。つまり、たくさんの人からエンゲージメントが得られたはずだ』と考えがち。けれど、実際のところはわからない」とベンタルは指摘する。「一方で、《Keys4All》は我々のプロジェクトの中でも、最もアクティブで、成功を収めたもののひとつ。実際に、あの車はカリフォルニアまでたどり着いたわけだから。でも、メディアに取り上げられたり、話題になったりすることは多くなかった。ここに断絶があると思う」
「バイラルと一口に言っても、そのかたちはさまざま」とワイスナーは補足する。「人が情熱を掻き立てられる複数の領域が交わるところに、バイラルは生まれる。刀剣の愛好家と銃の所有者、ナイキという企業とカトリックの信仰、というように」。こう言って彼は自身の両手を重ね、指を組み合わせたのち、爆発するようなジェスチャーを見せた。
スニーカー愛好家の間でも、MSCHFに注目する者は多い。そのきっかけとなったのが、2019年の《ジーザス・シューズ(Jesus Shoes)》だ。こちらは1425ドルで販売されたが、この価格はイエス・キリストが水の上を歩いたという記述がある、『マタイによる福音書』第14章25節にちなんだものだ。このコンセプトは、カトリック教会と、流行を追いかけ、高値でストリートブランドのアイテムを手に入れるハイプビースト・カルチャーの両方を同時に風刺する手立てとして考案された。だが、込められた皮肉を意に介さず、スニーカー・コミュニティはこのモデルを大歓迎した。さらにその後は、MSCHFの側もスニーカー愛好者からのラブコールに応えている。
《ジーザス・シューズ》の意図は「ブランド間のコラボレーションを揶揄するもの」
ペロタン・ギャラリーで展示されている作品のひとつでもある《スポットの復讐(Spot’s Revenge)》(2022)など、MSCHFが生み出した作品には、ギャラリーで展示される前に、別の形態を持っていたものもある。《スポットのリベンジ》のルーツは、ボストン・ダイナミクスのロボット犬にペイントボール・ガンを搭載した前述の《スポットの大暴れ》だ。ボストン・ダイナミクスからは多数の停止通告書を送付され、このプロジェクトを別の方法で実行する方法まで提案されたという。
「(ペイントボール・ガンの)代わりに絵筆を取り付ければいいと提案された」と、ワイスナーは目をむいた。
《スポットの大暴れ》は、ロボット犬はかわいらしく無害だとするボストン・ダイナミクスの主張に反して、実際には軍事目的で使用されていることへの批判としてつくられた。絵筆に代えることでどぎついイメージをなくそうとする同社からの提案を、MSCHFはよしとしなかった。「だから提案は無視することにしたんだ」とワイスナーは振り返る。
この話には続きがある。ワイスナーによれば、彼らがプロジェクトを続けたところ、ボストン・ダイナミクスはこれを阻止するために「遠隔でロボット犬をハッキングし、操作不能にした」というのだ。それから1週間後、複数の同型ロボット犬が、ニューヨーク市警とともに街をパトロールしている姿が目撃された。
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