石上純也
石上純也(1974–)は、自然と建築の境界を極限まで曖昧化するアプローチで世界的に注目される日本の建築家。SANAAでの経験を経て2004年に自身の事務所を設立、「建築を自由にする(Freeing Architecture)」という姿勢のもと、薄さ・軽さ・透明性だけでなく、近年は「重さ」や地層・地形そのものを建築化する方向にも振れ幅を広げている。代表作のひとつ《KAITワークショップ》(神奈川工科大学)は、壁を持たない大空間を305本の細い柱で支える設計で、外部の風景や植物を室内に連続させる“森のような教室”を実現し、AIJ賞などを受賞した。2018年には那須の《水庭(Art Biotop Water Garden)》で伐採予定の樹を移植し、160前後の池を灌漑系とつなげて“つくられた自然”を生成、2019年にオーベル賞(OBEL Prize)を受賞。2019年のロンドン《サーペンタイン・パビリオン》ではスレートの“岩の丘”のような屋根で地形を建築化。 2024年には中国・日照の人工湖上に全長約1kmの《在水美術館》を開館させ、屋内に水を引き込む“屋内風景”を提示した。キャリア初期の極小・極薄の実験(《Architecture as Air》で2010年ヴェネツィア・ビエンナーレ金獅子賞)から、風景スケールのプロジェクトへと射程を拡張し続ける稀有な存在である。一方で、2019年の無給インターン募集をめぐる批判も受け、労働環境や教育のあり方を巡る議論を喚起した。