薔薇の名前 - 読書メモ
中世カトリック、若き修道僧アドソと師のウィリアムが修道院で起こる殺人事件を巡って複雑怪奇な迷宮と化した図書館、普遍論争、異端論議、キリスト教における笑いのタブー…などなど知的エンターテインメントを楽しめる本となっている
ドラマ版(2017年辺り制作)はAmazon Prime等にある
原作改変要素はあるけど、概ね忠実に再現しており雰囲気はよかった
映画版は未視聴
個人的には中盤のベルナール・ギーによる異端審問が見どころ
ドストエフスキーのカラマーゾフの兄弟における大審問官の章もそうだが、信仰を問われることや信仰の危機に陥ることを描くことはストーリーテリングの手法として優秀だと思う
信仰というのはその個人にとっての本質とも言えるところを引き出してくる
何を信じて何を信じないか、信じているものが信じれなくなった時人間はどういった状態に陥るのかというのを作劇するというのはドラマティックであるしある意味物語の手法として本質的とも言える
全体的に読書体験としてとても優れていたので記憶を失くしてもう一度読んでみたい
中世史学者、記号論学者としてのエーコが知識を総動員して作った書物のための書物、この本自体が一つの迷宮のような多重構造を持っており奥の深いものとなっている