老神介護 - 劉慈欣
「こうして滑腔は文学を一年学んだ。ホメーロスの叙情詩を読み、シェイクスピアを暗記し、文学史に残る名作や現代の傑作を数多く読んだ。その一年は留学生活でもっとも収穫があった一年だ滑腔は思った。なぜなら、そのあと学んだことは多少なりとも知っていることだったし、遅かれ早かれ学べることだったが、文学に深く接するのは、これが唯一の機会だったからだ。文学を通じて、滑腔はあらためて人間を発見した。人間とはこんなにも精巧で複雑なものだったのかと驚いた。それまでは、人を殺すことは赤い液体で満たされた不格好な陶器の壺を壊すようなものだとしか思っていなかったが、自分が破壊していたものが並外れて美しく精緻な宝石細工だったのだと気づき、殺戮の快感が増した。」82p
文学でしか摂取出来ない栄養がある。また文学は人間を知るために読む。