ゲーデル・エッシャー・バッハ - あるいは不思議の環- 読書メモ
ゲーデルの不完全線定理、エッシャーの螺旋階段、バッハの対位法を用いた音楽には共通の環構造のようなものが見出される。
このことからアイデアを得た著者ホフスタッターがAIや形式システムなどを例に、それぞれのテーマを語るというような内容の読み物。衒学的な内容で、1980年代ベストセラーになった当時の雰囲気も感じられるが、生成AIが話題となった近年改めて形式システムと人間の違いを認識するため、AIには何が出来て何が出来ないのかを認識するために読むべきタイミングかもしれない。
p53 「非常に賢い人でなくても、自分がしていることを何かしら観察しないわけにはいかないし、その観察から仕事に対するよい洞察が生まれる。これこそ、すでに述べたように、コンピュータのプログラムには欠けているものである」
再帰的に自分を観察する構造が何重にも存在するというのが人間の特徴と言えるかもしれない。自分を観察する意識と、その意識を規定するメタ意識、さらにそのメタ意識を規定するメタ-メタ意識…など。意識という現象もこういった環状の再帰的な構造が関わっているということを著者は本書で述べている
p54「システムから飛び出る」
「実行中の仕事から飛び出して、何をしていたか見渡すことは、知性に固有の性質の一つである」
人間はシステムの中で仕事をし続けることも時折急に飛び出して仕事を見渡して洞察を得ることも出来る
どのようにこのスイッチがなされているのか考えることは割と意識という現象にとって本質的な気がする
p66 「既知の二つの構造の間の同型対応を認識することは、知識の重要な進歩なのである─そして私は、そのような同型対応の認識こそ、人の心に意味を創造する、と主張したい」
自然現象と観念に同型の対応を見て取ったり、解釈を与えることで人間の心に意味が生まれる
p109 「明らかに、無矛盾性とは形式システムそれ自体の性質ではなく、そのシステムに対して提案される解釈に依存している」
pqシステムに矛盾を導入していたのは私達の解釈であり、解釈を変えることでその形式システムは無矛盾性を回復する
例えば地球人と同じ言語体系を持つ宇宙人Aが存在したとして1+1=1という形式システムが存在したとしても = が より大きい という解釈であればこの形式システムが無矛盾であるように
つまりある形式システムが無矛盾であるということをその体系自身では証明出来ないというゲーデルの不完全性定理第二定理