できない私が、くり返す。
2014年 あかべぇそふとすりぃ
以下ネタバレ注意
table:主な登場人物
主人公 大崎 陸 おおさき りく --- 漣から受け継いだ†時を戻す時計†で未来を変えようと苦悩する
古川 漣 ふるかわ れん 灰?薄水 手塚りょうこ †時を戻す時計†の前の持ち主
ヒロイン 泉 詩乃 いずみ しの 黒 星野七海 りんご転がし娘:大病を患っている少女
ヒロイン 岩出山 未喜 いわでやま みき 茶?橙 藤乃理香 兄も手伝いでカレーショップ(匙)で働く
岩出山 篤史 いわでやま あつし 〃 水野咲 未喜の兄(シスコン)。カレーショップ(匙)店長
志波姫 香澄 しわひめ かすみ 茶アホ毛 楠鈴音 カレー屋の常連。大学2年
ヒロイン 瀬峰 藍里 せみね あいり 青 葵ゆり 詩乃の親友。バドミントン部、妄想系
矢本 由美子 やもと ゆみこ 金 柚原みう 藍里のライバル。ユーミン。やもっさん。
ヒロイン 栗原 ゆめ くりはら ゆめ 銀?薄桃 花澤さくら 本を読んでてぶつかる子。
米山 美羽 よねやま みう 茶 葉村夏緒 ゆめの友達
※物語に登場する†時を戻す時計†への言及はネタバレ扱いとしないので注意
総評
全体を通して見るとヒロインや登場人物を含め未喜カレー√が一番好きだったかも。藍里バド√も結構好きだった。ゆめ3P√の狂気にはちょっとついていけなかったけれど声とビジュアル的にはゆめが可愛いと思った。
漣さんにまた会えて嬉しかった一方、詩乃にはあまり感情移入できなかった、というかEND1が変なところで刺さりすぎて辛くてあまり好きになれなかった。この作品、詩乃のことが好きになれないとどうしようもないのでは。
過去に置いていかなくちゃいけなかったのは、自分にとっては漣さんの思い出よりむしろ詩乃との思い出だったような気がする。
漣と詩乃が逆だったら良かったのかな…(詩乃と先に出会って時計をもらって、2回目の詩乃の墓前に時計を置いて林檎を齧りながら5年を過ごして漣に再会、最後はやっぱり海辺で別れる)
ストーリーや絵面的には(本作同様)時計を最後に置き去るのがカッコイイ気はするんだけど、感情移入の大きさが自分的には詩乃とはそこまで深くなれなくて、ちょっとアンバランスだった。
全編通じて(詩乃END1の痛みは強かったけれど)一切泣けなかった。
全般
本作のヒロイン達、相手のことを「そっち」とか言いがち
未喜√
シスコン兄(篤史)のカレーショップの仕事を手伝いながら進む。香澄と篤史の仲を取り持つ(妹のことを考えて振ってしまった流れを時間を巻き戻してやり直すが変わらない、そこを変えずにどうして断ったのか掘り下げて香澄が見ている前で未喜に介入させることで解決)。時間巻き戻しに頼らずに真の問題解決に至るシナリオ結構好き。
未喜ってキャラデザ的には(因幡めぐる、壬生千咲、倉橋聖衣良みたいな)ファッション女子(自分的には苦手)の系譜なんだけど、妃玲奈(金色ラブリッチェ)みたいに好感をもてた。香澄さんも可愛いのでなんなら篤史とのラブラブシーンをおまけで見たかった。(→Extraに香澄さんと篤史のシーン入ってた)
藍里√
青髪でぼそぼそと喋る系なんだけど、飽きさせないトークで引き込まれる。
片腕のドラマーの話(元ネタはDef Leppardのリック・アレンの話(実話)かな)が伏線になるんだろうなあと思ったらやっぱりそうなって良かった。
最後は"やもっさん"に負けちゃったけど、そんなことはどうでもいい。悔いなくバドミントンの競技生活を終えられたし、親友もできた。右手の故障でバドミントンをやめるという事は変えられなくても、そんな事すら飲み込むような大きな視点で幸せをつかんだ藍里。起こってしまった過去はどう頑張っても変えられないけれど、そこから全力で向き合った未来で幸せを作っていけるという物語。ただのバドミントン青春物語じゃない。いいシナリオだな。
ゆめ√
「ーー時間、戻してますよね」
ゆめちゃんの作画がなんか二次元というか少女漫画っぽくて(両目とか身体とか)微妙な違和感というかコミカルさがあるんだけどそれも悪くない
花澤さくらさん声もかわいいし好き…(かりぐらし恋愛の時(杏)はあんなにスキップしまくってたくせに)
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陸に対して敵意(殺意)丸出しの美羽に対して何も言わない(言えない)ゆめは見ててちょっときついなと思った。
警戒しながら読み進めるの(サスペンスっぽい)そんなに好きじゃない
そしてまさか3Pオチになる(そこに落とす)なんてね、な結末だった
詩乃√
「うん。1回目のときに、家族以外では誰よりも早く教えたよ」
「1回目?」
「あ、最初に病気が分かったときって意味ね」
ガン再発も含めての1回目か(詩乃自身も何らかの方法でタイムリープしてるのかと思った)
すれ違い。演出されたすれ違い。
説明しづらい事だとは思うけれど、巻き戻しの事を話さないのなら、肌身離さず持ち歩いている時計の元の持ち主(漣)のことが5年の月日を経ていくらか風化した「遠い日の憧れ」以上の存在として詩乃に映るのは避けられない。
一方、同様の境遇の2人を重ねて見てしまうのも陸が生きてきた道からすると避けられない。詩乃を助けたい(というか運命を変えたい)動機としては漣さんの存在はめちゃくちゃ大きかったと思うけれど、陸が詩乃を愛している時にそこまで漣さんを重ねていたようにも思えず(別に漣さんに似てるわけじゃないよなあ的認識)。部屋に戻って一人になったときに記憶の中の漣さんに語りかけるシーンは幾度となくあったけれど
途中からだんだん詩乃だけが盛り上がってるような感じに見えてたけど、そもそも漣さんの話が持ち出される前から詩乃の言動の至る所にちょっとずつ棘があるというか、最期に至っては寒気しかしなくて辛かった。
二人の気持ちの温度差を「陸が詩乃と漣さんを重ねてるから」というのは飛びつきやすい理由だけど、勿論漣さんの話は詩乃からすれば気に入らない話に違いない(※Re:callでも当然そこは変わってない)のだけれど、陸がわざわざ持ち出したのではなく詩乃が邪推して問い詰めて引きずり出したように思えるし、それを持ち出して陸を遠ざけ関係を崩していく破壊衝動(選択肢4)のように思えた。こんな風に責められるのは(悪魔の証明っぽいことを求められてるみたいで)きついな。
そもそも、タイムリミットがある上で、Todoリストを埋めるかのように始めた恋人関係が「ごっこ」スタートじゃないならむしろ驚き。その上、(時計の(巻き戻しの)事を一切明かさずに)詩乃の7つの願いを全部叶えるということが一見ハッピーエンドに思えてしまうという罠。詩乃と陸のあるべき関係は(仮に二人が恋人関係になることを是としたとしても)願いを叶えることにはないのではとか思ったり。
(以上Re:callに入る前に書いたんだけど、全部そういう演出だよね。)
ネットの感想を見ると皆さん絶賛してるRe:call時計巻き戻し、(細田守版「時をかける少女」の終盤のタイムリープは感動シーンなんだけどなあと思いながら)END1の寒気を引きずったまま見る白黒の画面は余計に寒気を感じるだけだった(悪趣味とさえ思った)。霜月はるかさんの歌好きなんだけどこれは入ってこなかった。残念。
Re:call(漣からの詩乃)
漣さんに再会できてめちゃくちゃ安堵した。
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(なぜこの顔のスクショを選んだ)
奈月ちゃんの話は何かの伏線?→諦めずに全力で生きる姿。陸(と漣)が学ばなければならなかった?こと
漣さんとは最初の時も最後まで行ってたんだ(性的シーン。前に回想シーンが出てきた時は夢か何かかと思ってた)
漣さんが詩乃の7つ目の願いは本当は別にあるんじゃないかとの指摘。こういうの好き。
陸は「裏切り」という言葉を使っていたけれど、正直詩乃は陸のことを責めすぎだし陸も自分のこと責めすぎなんじゃないの?と思った。END1で詩乃は負けず嫌いと言ったけれどちょっと陰湿な復讐だと思ったし(陸の自己満足&自業自得ではあるけれど、また5年の月日を辿って詩乃との関係をやり直して…も陸の罪悪感解消があってのことだしなんなら最初の「人助け恋愛ごっこ」の方がましなのではまであるから、詩乃が納得すればいいのかよという気持ちにならざるを得なかった)
詩乃の性格的に「陸くんは自分だけを見てくれている」と詩乃本人が思えることが重要なんだとは思う。
そして陸は5年の月日を辿って詩乃と出会い直して、前と同じ「点」を辿りながら異なる「線」を描いていく。
それは分かるんだけど、漣さんとの思い出を5年前に置き去った陸がその道を選ぶことが腑に落ちるだけの感情移入ができなかった、あるいは詩乃にそこまでの魅力を感じられなかったのが残念。
詩乃の未来を変えたいという思いからであれ、漣さんに会いに戻る(そして誘惑に負けて漣さんとヤることヤってしまう)事が本編の障害にならないのは詩乃が巻き戻しの事を知らないこと、この決着のつけ方で詩乃が手打ちにする前提が必要な気がして、恋愛というより詩乃の胸三寸感があってなんか萎える。
記憶の中で顔を薄れさせつつある「あの人」は、
別れ際に呼び方を変えてくれたのだし。
それすらも伏線だったのか…(今回のシナリオ、詩乃とくっつける気満々じゃん)
でも詩乃は結局前回同様「陸くん」呼びに落ち着いた。(レンレン呼びをしないのと同様「未来は変えられない」という文脈にも取れるけど、「りっくん」呼びで(プレイヤーに)漣さんを想起させないことも重要なのかなと少し思った。漣さんの思い出がだんだん遠くなっていくみたいな事(陸の内面)をわざわざ言わせてるのもそうだけど、(詩乃にというより)プレイヤーにも納得させるためかなとか。
詩乃とのお別れの日(点)は一切変わらなかった(変えられなかった)けれど、その日々の中身(線)は変わってるじゃん…
これは未来が変わったと言ってもいいんじゃないかと思った。
というか、巻き戻しで変わるものと変わらないもののコントラストが見事、と言うべきかもしれない。(法則性があるのかわからないけど、どこに注意をおくかで変わる気もする)
最後詩乃の墓前に時計を置いていくシーン、二度目の詩乃までの5年間には使わなかった(と思われる)時計なのに、置いて行ってしまうことに心細さと、(過去に残してきた2人と「いつでも会える権利」を手放し、もう二度と会えないことになる)孤独感を感じた。できれば二度「退路を断った」後の陸の幸せが見たかった。
というわけでRe:callは、未来の幸せのために、前を向いて歩いていけるように、過去の思い(後悔に限らず?)を未来へ持っていかない決意の物語だった(のだろう)。
Piece of Memory(あがががががー)
漣(何度繰り返してもレンレンとは呼んでもらえない)との不思議な出会いと、歯医者ループトラウマの話(おまけストーリー)。
面白いけどRe:Callの余韻の直後に見るような話じゃないな…(ExtraのAfter storyの方に入れてほしかった)