ツールの利用によるマイナスとプラス
このようにMetaMoJiさんがお作りになっている2つのアプリ。「MetaMoJi Note」と「MetaMoJi Share」は、大変有益です。板書するだけだったら「MetaMoJi Note」でできます。私のiPadに書いているものが学生のiPadでも同時に見えたり学生が書いたものがそのまま反映されるのが「MetaMoJi Share」です。この2つのアプリのおかげで、
「デジタル黒板」は黒板以上のことができます。最初に申しましたように、ツールを使うことによって今までできていたことよりもできることが減る場合、その用途は限定的です。だから私は授業では「スライド」を使いません。講演などで求められれば使いますけれども、授業では使いません。
一方この「デジタル黒板」は、普通の黒板でやっていたことが全部できる。黒板よりも機能が減ってないから「黒板」と呼べる。黒板でできていたことが全部実現している。ここが出発点です。やっと授業でデジタルなものを使うことができるように初めてなったのです。iPadとアプリの組み合わせです。更に、このデジタルな環境を使うことによって、普通の黒成蹊法学82号講演板ではできなかったプラスアルファがある。ですから、「黒板」に「デジタル」を付けて、「デジタル黒板」と呼ぶことができるのです。
従来できていたことができなくなったり、自由が制限される場合は、新しい物を使う意味は小さいと思います。その価値も小さい。このように、いままでできていたことは全部きちんとできて、それに加えていままでよりもできることが増えれば、授業のやり方も進化させられる。より自分の目指す授業の体制、あるいは授業の進行の仕方を実現することができるのです。
私はいままで20年以上にわたっていろいろなツールを試してきました。そしてこの3年間、このiPadとMetaMoJiのアプリを使い、試行錯誤して色々授業に生かしてしてきました。今のところ、授業のツールとしてこれが最善です。現状、ここまでのことができるのは、これだけです。
本日のタイトルは「iPadを使った『デジタル黒板』で実現する新しい教え方、学び方」でしたが、本質的な意味においては「実現する」とか「新しい」、「これで何かが変わった」というわけではないのです。iPadを使うことによって、授業、教え方、学び方が変わったのではない。従来から行われていた方法を、デジタルデバイスによってさらに進化させたというだけなのです。
それが証拠に、本日のお話、始めの3分の2くらいは、ほとんどiPadやデジタルが話題に上りませんでした。元々我々がデジタルデバイスなんて使わずにやっていたことを、形を変えて行っているだけなのです。ITを使わなくても、授業を良くすることはできる。「良く」というのは、価値観が含まれますが、私の価値観において良くする、つまり学生が主体的にトレイニングを積む場としての教室を運営することが、ITを使わないでできるのです。非ITで実現できます。けれども、それにITを加えたときに、より実りが多くなる。そうなって初めて、ITがITとして、目的ではなく手段として活き、それを使うことによって学生達の訓練の場としての教室がより実益の多い環境になる。という風に考えております。