問うて引き出す
先ほど、学ぶはlearnと言いましたから、「教える」方も英語を並べてみましょう。「教育」です。「teach」もそうですけれども、教育は「education」。「educe」という動詞の名詞形です。educeというのは「引き出す」ことです。educationというのは、したがって、我々教員が何か情報を与えることではないんです。学生の中に既に持っているポテンシャルをいかにして引き出していくか。それがeducationです。
そのために私は問いかける。授業でも問いかける。ガンガン問いかけます。そうすると学生達は、考えます。色んな発言をします。いつもですね、まさにこの教室で著作権法の授業をしています。私が問いかけると、ガッと何人も手が挙がります。一般的な、教員が滔々と語る教室では見られない光景です。何でそうやって学生達が躊躇なく手を挙げるかというと、全ての発言を私が褒めるからです。学生が何を言っても、「なるほど!」「面白いね!」「よく考えたね~」「へ〜」「素晴らしい!」と。
私が想定していた範囲内の発言が98%ですけれども、中には本当に私が感服するようなことを言う学生がいるんです。まだその授業が始まって日が浅いのに、ズバッと本質的なことを言う学生がいるんです。本人それは気付いていないですよ。ものすごく本質的なこと言ったり、私が想定しているのとは全く別の世界の解を出すとか。私は思っていなかったけれど確かにそれはあり得ます、という答えであったりとか。非常に感心するようなことを言う学生がいます。そういう学生がいたら、心底ほめます。
教員が滔々と語る授業では、そういう学生からの光るアイデアが出る機会は一切ないんです。学生からは本当に素晴らしいアイデアが出るんですよ。だって私の半分も生きていないのですから、私よりもピュアで、柔軟。法律学を十何年も研究してしまった私はすでに情報過多なんです。だけど学生達の頭の中はそうではないから、私が想像、想定しないような、非常に優れた解が出るんです。本当に出るんです。学生から私が教わること、たくさんあります。そういう貴重な機会を得られるのが授業なのに、一方的に語り続ける教員は本当に勿体ないことをしていると思います。