第5章 今後の展望
法学教育においてもっとも肝要なのは、学生たちが法解釈と法適用を自ら繰り返すことで、それに習熟してゆくことである。その訓練をする機会を提供し、適切なカリキュラムとアドヴァイスによってそのスキルを身に付ける環境を整えるのが教員の役割だ。
教室で学生たちは、繰り返し条文を読み、解釈し、事実を当てはめ、条文を適用して事案の法的解を導く、という訓練をする。そのための仕組みを教員が構築し、実践することが、今日の法学教育に対する社会的な要請だと考える。ビジネスにおける個々の契約や、法的アプローチを要する諸活動において、ルールに基づいてプレイし、判断するスキルを身に付けた社会人が求められているからである。単なる法的知識は使いものにならないから、教員からの情報伝達ではなく学生自身が法律を使う知的トレイニングを重ねることこそ、法学教育の実りを大きくするものと考える。
本稿が法学教育の進化とFD(FacultyDevelopment)の一助となれば幸いである。