06019-200927 オンデマンド方式の遠隔授業にもやっぱりScrapboxが有益と感じた多摩美術大学のオンライン授業
2020/09/27
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一口に「オンライン授業」といっても2種類あります。「リアルタイム授業」と「オンデマンド配信」。
前期にshio.iconが担当する授業は4月からすべて「リアルタイム授業」で実施しています。前期は成蹊大学、政策研究大学院大学、そして信州大学の授業をオンラインで行いました。後期も成蹊大学と慶應義塾大学SFCはZoomを使ったリアルタイム授業。
教員と学生とが全員、Zoomの一つのミーティングルームに入り、授業が進みます。実際に対面の教室という一つの空間と時間を共有するのと同じことが、Zoomのミーティングルームというヴァーチャル空間で実現されます。
教員の問いかけに学生たちが呼応し、発言や質問が発せられ、それにまた教員が応答する、という「対話」が成立するのも対面の教室と同じ。前期に担当した授業のうち、例えば成蹊大学の「民法2」では、1回(2コマ連続200分)で1,537件、学生からの発言がありました。実教室で学生の口頭発言は(特に何らかのシステムを用いない限り)いっときに一人に限られますが、Zoomの授業ではチャットによって発言できるため、発言したくてウズウズしている学生たちは自由に発言の機会を得るのです。このように全学生による「全員対話」が成立する点は、リアルタイムのオンライン授業にある大きなメリットです。
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一方、後期に担当している授業のうち、多摩美術大学のみ「オンデマンド」方式。あらかじめ教員が用意してオンラインで公開した動画を学生たちが好きなタイミングで視聴します。
多摩美術大学では実技科目に参加する学生を分散するため、(一般的な分類における)「講義科目」はすべてオンデマンドで行うと決まったのでshio.iconが担当する「情報と社会」(内容は著作権法、民法の基礎)は基本的にオンデマンドで実施し、月1回だけZoomによるリアルタイム授業で補完してほしい、とのご連絡を多摩美術大学からいただきました。shio.iconの授業は一方的な講義ではなく、学生との対話によって展開していく形式ですから、オンデマンド方式には馴染まないので、その実施方法を教務担当の先生と相談。shio.iconが一方的に「講義」する動画を作成するのではなく、別のところで学生たちと「対話」をしている授業の録画を視聴してもらい、さらに学生たちとの「対話」をScrapboxなど別の形で確保するのはいかがでしょうか、と提案したところ、全面的にご賛同いただきました。幸い、前期に実施した信州大学の授業が90分×10コマ分あり、それをオンデマンド教材として1週に1コマ分視聴していただくとともに、Scrapboxに7つの項目を記述していただき、それに対してshio.iconがコメントを書いて全員に公開する方式に決定。初回のリアルタイム授業の際に、Scrapboxの使い方を含めてこの授業の進め方について説明し、学生たちのご理解と協力を得ました。動画視聴、「7つの視点」による記述、リアルタイム授業とを合わせて、所定の15コマ分の時間数を確保できます。
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1週目の記述を読み、全員分のコメントを返したところ、やはりこのようなオンデマンド形式の授業にもScrapboxが大きな力になっていると実感いたしました。
まず事前準備。以下のようにScrapboxで環境を作成します。
Scrapboxに2020年度「情報と社会」のプロジェクトを非公開で作成
多摩美術大学のLMSから履修者リストをダウンロードし、Scrapboxの[ブラケット]をエディタで付加して全員のリストを作成。履修者は23名。例えばこんな感じ。
20000001 氏名1
20000002 氏名2
20000003 氏名3
20000004 氏名4
20000005 氏名5
20000006 氏名6
その各氏名をクリックすれば、その学生のページが自動的に生成されます。
その各学生のページに、オンデマンド教材を視聴する「7つの視点」を下記のように授業10回分記載。
授業第1回
(1) この授業で新たに知った情報
(2) 面白かった情報
(3) 予想と異なって意外だった情報
(4) 自分の創作活動に役立ちそうな情報
(5) この授業を視聴して思ったこと
(6) よくわからなかった情報
(7) shioへの質問
多摩美術大学が利用しているGoogle ClassroomでこのScrapboxプロジェクトへの招待URLを配信。
Scrapboxにオンデマンド教材を配信するページを作成し、各週、動画を置いたYouTubeのURLをペイストすれば、教材配信完了。下記のようにURLをペイストするだけで動画が貼り込まれるので簡単です。
https://youtu.be/COE0hQDwDQA
こちらが信州大学での初回の1コマ目です。先方の助教の方が初めて録画したため、フォーマットがマッチしていませんが、次の回からはこの画面の縦横比率にフィットする録画がされるようになりました。信州大学の学生たちとご担当の玉井克哉先生から録画公開の承認を得ております。
準備は以上です。
学生たちはその週の動画を視聴し、7つの視点についてScrapbox上に記述します。
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1週間後の締め切りが過ぎたら、shio.iconは各学生のページにアクセスしてコメントを書くと同時に、「(6) よくわからなかった情報」、「(7) shioへの質問」に関しては新たに「第1回shioからコメント」ページを作成して、回答を記述します。そのリンクをGoogle Classroomに流し、1週間のルーティン完了。
Scrapbox上で、全員の記述を全員が読めるため、他の学生が何を感じたか、何を考えたか、どんな疑問を持ったか、知ることができます。このようにクラス全員が読める形で記述すれば、教室で発言しているのと同じ状態。履修者全員による「対話」が成り立ちます。その「全員対話」こそ、shio.iconの授業の理想です。教室での「対面」授業だけでなく、「オンデマンド配信」型の授業でも「全員対話」を実現するツールとして、Scrapboxが優れています。
第1週に学生が書いた記述に、象徴的なフレーズがありました。 (4) 自分の創作活動に役立ちそうな情報に対して、
このサイトの存在
との回答です。
早くもScrapboxによる「全員対話」の価値を感じてくださったのでしょう。素晴らしい。
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