2020年度政策研究大学院「民法」シラバス
1.本講義の概要
小中学生から「民法って何ですか」と問われて、的確に答えられますか?
この授業は、民法の初学者を対象とし、「民法の体系と本質を把握し、他の法律に応用して使えるようになること」と「民法とは何かを小中学生にも説明できるようになる」ことを目標にします。社会で生きるすべての人が毎日関わるルールの体系である民法を、本質的、体系的、構造的に捉えて、実際に使えるようになりましょう。すべての法律の基本である民法がわかるようになると、他の法律も読めるようになります。そこで民法を通して「法令の条文の読み方」を基礎から訓練していきます。「読み方」というのは、ただ字面を追って「読む」のではなく、条文に表現されているルールの意味を深く捉えて実際に使えるようになるための「深読み」をする「読み方」です。それができれば、実務でも修士論文を書く上でも「基礎体力」となります。
扱う対象は民法全体(第1編~第5編)ですが、中心となるのは第1編から第3編に規定されている、いわゆる「財産法」です。第4編、第5編のいわゆる「家族法」についても体系的に必要な限りで言及します。民法には法的思考体系のエッセンスが凝縮されていますので、どの分野の法律を研究するにおいてもその基礎として民法の体系的理解が生かされます。
したがって本講義の目的は、
(1)民法の体系を把握し、本質を追究し把握すること
(2)民法に規定されている個々の制度の意義を民法の本質と体系の中に位置づけ、民法をひとつの有機体として捉えられるようになること
(3)法令を自分の力で読み解き、解釈し、事実に適用するスキルを身につけること
です。
講義は塩澤とみなさんとの間で問答をしながら進めます。みなさんの積極的な貢献を期待しています。民法は深い。その深さを味わうためにみなさんで協力して、民法の世界を探訪していきましょう。
2.各授業のテーマ
第1:民法の全体像と構造
第2:契約法の構造と契約の諸類型
第3:意思表示
第4:代理
第5:契約の効力
第6:債務の履行・不履行
第7:能力・法人
第8:所有権と用益物権
第9:物権変動
第10:不当利得・不法行為
第11:債権の効力
第12:債権譲渡・債権の消滅
第13:人的担保
第14:物的担保
第15:親族法・相続法
3.成績の評価方法
クラスおよび議論への貢献ならびに課題への取り組みによって評価します。そのため毎回の発言回数を記録します。塩澤が発する疑問に対して自己の見解を表明すること、他者の見解に対する意見を述べること、議論を深化させ発展させること、他者の理解に資すること、扱われた問題に関する資料を提示すること......。すべて貢献です。クラスというコミュニティーにプラスのスパイラルを作っていくことです。参加者一人一人が学問的・人間的に成長するために、自分にできる貢献を見つけ、実践してください。期末試験は(みなさんからご要望がない限り)実施しません。発言回数を平常点として評価いたします。
4.テキスト、参考文献等
条文を読む道具が必要ですので、インターネットに接続可能なITツール(Mac/iPhone/iPad/Windows PCなど)を必ず持参してください。また信山社『法学六法 '20』(1,000円)など2020年版の法令集(判例付きでないもの)を持参することをお勧めしますが必須ではありません。
5.履修上の注意
民法の初学者を対象とする講義ですので、民法既修者(法学部卒業者など)が履修される場合は、初学者に対する配慮とご協力をお願いいたします。本授業は民法の体系的な本質を読み取ることを目的としておりますので、民法既修者にとっても意義あるものと推測いたします。