探究のパラドックス
ソクラテスはメノンに「まったく知らない事をどうやって探究するのか、探究した結果それがそうであるとどうやって判るのか」と問われ、つまりこういうことかね?と聞き返した内容
「人間には、知っていることも知らないことも、探究することはできない。知っていることであれば、人は探究しないだろう。その人はそのことを、もう知っているので、このような人には探究など必要ないから。また、知らないことも人は探究できない。何をこれから探究するかさえ、その人は知らないからである」
未知を探究しようとしても、結論にはたどり着けない。 つまり、探究する行為は発生しえない。
だがわれわれは、自分が知らないことを発見することはできないし、そのようなものを探究すべきでもないというふうに考えるよりも、人は自分が知らないことを探究すべきであると考えるほうが、よりすぐれた者であり得るし、より勇敢であり、 より怠けない者であり得るのだということ――この点については、わたしは自分にできるかぎり、ことばで大いに主張するつもりだし、実際の行動でも十分に示していこうと思うのだ。