監督義務者責任
雑誌「世界」2015年6月号掲載の川村百合「「親の賠償責任」はどこまで問われるのかー最高裁新判断の意義」という記事を読んだ。
この記事は最高裁平成27年4月9日判決(校庭内でのフリーキック練習の際に小学5年生の児童が蹴ったサッカーボールが校庭を越えて道路に飛び出し,このボールを避けようとしたバイク運転中の高齢者が転倒し,死亡した事件)についての解説したものなのだが,筆者は最高裁が児童の両親に免責を認めた結論について好意的なようだ。判決言渡しから約2か月を経過しているが,報道や他の弁護士のブログ等を見ても,結論に賛成しているものが多い。
ただ,「責任無能力者の監督義務者の責任を否定することは,当該被害者に対する法的責任を負う者が存在しなくなることであるから,当該被害者の法的救済を図らない結論を正当化できるだけの実体を備えたものでなければならない。よって,免責が認められる場面は極めて例外的な場面に限られる」(古笛恵子「認知症患者による事故と監督者の責任ー認知症徘徊事故を契機として」(「法律のひろば」2015年2月号)という指摘もあり,この点について個人的には未だ考えがまとまらない状態にある。加害者側が賠償責任保険に加入しており,監督義務者責任の成立が認められれば保険金が支払われるようなケース(特に,被害者側が傷害保険等に加入していない場合)を考えると,さらに悩ましいところである。