数学受験術指南
森 毅『数学受験術指南』
受験術というよりも、森さんの美学が語られている
受験術として実用可能かといえば、微妙なところだが
読んでよかった!おもしろい
逆張りが目立つ
1. 受験は精神より技術で
受験は「一に要領、二に度胸、三四がなくて、五に運次第、」
強迫観念に駆られているだけで、中身があるかどうかとは別 まいにちある程度机に向かうと、何かやったつもりになれる
精神安定剤として毎日机に向かうのもアリ
学校のテストはいい気分になるためのもの 本番ではないので悪くて落ち込むのは不毛
受験勉強にとって、「ネバナラヌ」はない
落ちても絶対に学力のせいにしてはいけない
不確実な状況においては、このように考えたほうが要領よくいける 自分を知っていると強い
自分に目を向ける習慣
2. 入試採点の内幕
毎回作問者は変わるから
良問:初見で、受験勉強で覚えた「解き方」が役に立たないもので、手がかりが作りやすいもの
しかし作るのが難しい
採点基準は答案を見て決める
留意のあとが見られればよい、程度の採点基準の場合、下書きの計算から何から、状況証拠になる 消しゴムで消した跡をすかして見ていた採点者もいた
とにかく採点に「絶対」はない
3. 技術としての受験数学
こうした受験技術を活かすには、ある程度まで数学の基礎ができていなければならない
基礎とは?
ごく僅かの、本当に、基礎的なことが、そのかわり、本当によく理解できている、それだけでよい。
「受験数学」とは
半分から三分の二を「選択」して解く
「解き方」を知っていて解く問題は出ない
受験数学の訓練
答案の優劣を見る目をつける
計算違いの発見法
違和感を感ずる嗅覚を鍛える
違ったら直せばよい
友人どうしでエエカゲンに計算して誤りを見つけてもらう
自分でワーッと計算して次の日点検する
自分の答案を客観的する
自分の解答を、テストが終わった後も覚えている程度には客観視できる
自分の解答ペースを計測
この程度の計算には何分かかるか
この程度の問題はどのくらいで解けるか
問題をざっと読んで、解答予想時間を書いて始める
予想の精度を高める
一題15分以内、などと決めておいて、その時間内に解ける問題だけを選んでホイホイ解く
15分以上かかったら失格
15分以上かかると思ったら最初にパスしてよい
解ける問題を早く見つけて、適切な時間で解くというのが受験本番
ランダムな章から6題くらい選ぶのがよい
終わったら、必ず自分にとっての難易の評価を付け加える
量に頼るのは「勤勉」という名の知的怠惰にすぎない
問題を多くこなすことにとらわれすぎるな
できるだけ少量の訓練から、できるだけ良質の力を身に着けること、これが技術の獲得というものである
解答の骨格を把握する
解答を三つくらいの段落にわける訓練
採点者がするのと同じ
簡略化したり、詳しくしたりする訓練
解答のフローチャートをつくる
例題を略解に直してみる
略解を詳しく直してみる
なぜ役に立つのか?:部分点を取りやすくなる
採点者の視点が理解できる
ヒントの意味を考察する
受験本番でも、手がかりが誘導としておかれている場合が多い。こうした手がかりを見つける観察眼を鍛える
4. 受験数学以前
テスト前の勉強は、留年の危険がないかぎり、絶対にするな 数学で試験前に勉強して実力がつくことはほとんどない
実力以上に成績がよくなったら、それが間違いのもとである
成績をあげるかわりに実力をつけろ
時間のことは気にするな
一つの問題についてトコトン考えてみる経験をすると、それきっかけで数学が好きになれる
短期集中的な忍耐力もつく
公式を覚えるな
風景のなかで公式を見る
受験数学以前の段階で、できるだけムダをする
暇つぶしの計算練習とか
予習より復習
たまには脇道にそれたり、背伸びをしたりする
友人と数学の話をする
他人におしえる
文章や、会話
腕力のつけ方
ドリルが嫌いな人向け
1000までの素数表を自作
二桁の対数表を手作りで作ってみる
教科書の練習問題よりちょっとめんどくさいほうがよい
ヒマをつぶそうとするな
自分をのばす余裕をもったほうがよい
5. ぼくの受験時代
戦時下の旧制高校の受験について述べられている
6. 数学答案の書き方
式が並んでいるだけではだめ、文章にせよ
コンマやピリオドを打つ
書かなくてよいこと(本筋に関係のない式変形)と、書いたほうがよいこと(留意すべきこと)を区別する
書かなくてよいことは計算欄に書く(けさない)
本筋を捉えて要領のよい答案を書く
新しい記号は説明する
$ f(x)などの関数の定義
「$ A = x^2+x+3」とだけ書くのではなく、「$ A=x^2+x+3とおけば」 と文章にする
答案を作ったら、無駄な枝は刈り込む
一本線を引いたりするだけでよい
数学的良識に従う
決まり文句を使うな
表現に神経が行き届かなくなるから
数作文をする
英語の数学は品詞が分けられていて見えやすいため、易しいものを読んでみるのもよい
ここでは、「数学の論理性を教える」だの、「数学の有用性を教える」だの、崇高めいた話は、いっさいしていない。そんなものは、受験に関係ないからだ。
あるのはもっぱら、「計算違いを直す法」だったり、「答案を刈り込む法」だったりする。たいていは、人間は誤ったり、ムダをすることを前提として、それに恰好をつけることを目的としている。技術とは、そうしたものだ。
7. 大学への数学へ
問題はあまり解かない あくまでサブ
重要さの弁別(主題と副次的なこと)がわかるとよい
隅から隅までやっている暇はないので
8. 数学という学問
数学とはなにか、というのは百人百様
数学をきらいにならないで