2020/2ぐらいまでに読んだ本
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左から、おもしろかった順
実験によるエビデンスや過去の経済学者(ケインズ含む)にスポットを当てながら、ベーシックインカム(BI)と労働時間の短縮による、現代におけるユートピアを提示した。ユートピアといっても実際のデータに基づいているので、完全なる夢物語ではない。とはいえこのような主張には反対が必至であり、実現への道は前途多難になるが、それは諦める理由にはならない、と熱く語る。データを逐一検証するのは難しいので、「なんか実現できなくはなさそうないい話」として読んだ。巻末で紹介されているDe Correspondent (The Correspondent)も購読してみた。結構面白い。つづきは例の記事参照。
佐藤優氏の本は帯に載った筆者の見た目がイカつくて敬遠してた(目力が強すぎる)。この本はそういう装飾がなかった。副題は「未来のエリートとの対話」。灘校生から質問を受けて、それに返答していくスタイル。
対談本はあまり読んでいなかったが、これは一方の年代が近いのでそういう意味では読みやすかった。
「利口なインテリ君か゛わ゛い゛い゛な゛あ゛」と思いながら読むもよし、生徒を自分に置き換えて「未来のエリート」の気持ちになってみるもよし、そして唐突に現れる彼らの知識の深さに目を丸くするもよし。自分は全部やった。まあこの本はトランプ対クリントンの大統領選の前に出された(氏は文中で「トランプは大統領になりえない」と語っている)ので、実際にはここの生徒は自分よりちょっと上なんだけど…。
「受験生が多いから難しくなる」んじゃなくて「難しいから受験生が多くなる」現象や、頭が良い学校で起こる「棲み分け」への言及もあって納得。学校に限らずデキる人が集まる場所では、得意分野が同じ人がたくさんいると負けた側が病んじゃうから、得意分野があんまり被らないようになんとなく調整されていく(していく)のは自然なことだよね、という話。自分が頭が良い学校にいるわけではない。めちゃめちゃデキる人(天才と呼んでいいのかもしれない)に少なからず会って自分のスキルを悲観することもあるので、そんなときの生存戦略をぼんやりと描いている。それはわりとみんなやってることなのかもしれない。
もちろん、元外交官としてもインテリジェンスや政治の裏話もふんだんに入っていて満足度が高かった。
いや〜教養って大事ですね。高専入る前に読んでたらなんか変わったかもしれない。
考古学がまだ考古学ではなく「宝探し」だったナポレオンの時代から、放射性炭素年代測定を活用した緻密な調査を行うようになる現代まで、考古学の歴史を追って紹介する本。
ユーモアも織り交ぜつつ世界中の調査事例を人物を中心に細かく紹介している。半分ほど読んだが、自分は飽きた。カタカナの名前が多くてごちゃごちゃするし、しょうがないね。
上の「隷属なき道」を読んでBIについてもっと知りたいと思って読んだ。BIとは何か、から始まってその利点、また「よくある批判」、それに対する反論、さらには実現への政策的アドバイスまで述べられている。
総合的ですげーと思いながら読んでいたんだけど、章が変わると同じことをまた書いていたりして正直くどい。もしくは「BI辞典」としてどこからでも読めるように設計されているのかもしれない。それなら同じことを書いているのは筆者の親切となる。
「隷属なき道」で紹介されていない実験もいくつか紹介されている。ただこれと違って、「BIは労働時間の短縮に貢献しないし、AIは労働の大部分を置き換えるわけではない」と主張する。どこかの調査結果ではAIは労働のおよそ9%しか削減せず、結局人間は働き続かなければならないらしい。一方で、BIを既存の社会保障を撤廃・代替するための(リバタリアンにとっては「社会保障よりマシな」)制度として考えてはならないとする点は両書に共通している。あくまでBIは社会保障(生存権確保)の一部でしかなく、社会的弱者には追加の支援を行うべきだとしている。
営業・コンサルを経験した筆者の体験を交えつつ、自信の作り方を解説している。あまり新鮮なアイデアはなかったが、何かと読者を勇気付けようとしているのが伝わってきた。自作した仕組みとも似た部分がある。
何を思って借りたかわからない。斜めに構えて粗探しをするように読んでしまったのでほとんど内容を覚えていないw
英語論文の文献からとりあえず引用して訳張っといたら読者君も納得してくれるやろ、というノリを感じる。よく言えば、小難しい話は抜きにして解説してくれている。
ただ出たのが2010年代前半か00年代後半なので、紹介されている安眠グッズがほとんど「それスマホでよくね」で片付いてしまうものばかりで時代を感じる。
まだほとんど読めてないのでまた今度。詩は反戦がメインテーマっぽい。自伝部分も面白そう。昔の文章は良い作品はもちろんのこと、それぞれの時代背景が描写されざるを得ないのが読んでいて楽しい。
有名な本。勧められて読んだ。数ヶ月前に読んだので細かくは覚えていない。
奴隷制度や公共事業(だったかなあ…?)、「トロッコ問題」など具体的な事例を示して筆者含めさまざまな立場の主張を紹介している。ざっくりいえば、功利主義(ベンサム・ミル)、美徳第一主義(アリストテレス)、自由主義(カント)が出てくる。ホッブスやロックも出てきたと思う。当然だが、教科書で学んだのとは違う方法で彼らの考えを知ることができた。
「運」で得た利益を独り占めしてよいのか、という議論を一番よく覚えている。たとえば年に巨額の収入を得るバスケットボール選手が生まれるまでには、本人の努力以外にも、「努力をできる環境を得た」という幸運があるのではないか。
エッセイ本「金田一秀穂の心地よい日本語」にも似た記述がある。筆者が進学校で講演した際に上に似た問いを(ついうっかり)投げかけ、後に生徒から「ライプニッツは数十年も数学の難問に一人で立ち向かったのに、それを否定するんですか?」と質問を受けた。「食っていくのも大変な時代に、お金を出してもらったり生活を支えてもらったりして、うまくいくかもわからない数学の研究を数十年も続けられたのはやはり運がかかわっていて、本人の努力のものではないでしょ」と回想している。その場では適当に誤魔化したそうだ(生徒のやる気を削いじゃうからかな)。この本も前に読んだのでかなり曖昧な記述になっている。カッコ内もたぶんでたらめに記憶が編集されているので、気になる人は本を読んでみるのをお勧めする。軽妙なエッセイが多い。 これにはとても同意した。筆者の文章力もさることながら、自分自身、運だけでいろいろやらせてもらっている自覚がある。
ゲームAIの開発者である筆者が、人工知能に欠かせない「知能とか何か」という問いについて哲学的側面から考え、(書名と同名の)勉強会で使えるようにまとめた知識を本にしたもの。
デカルト平面でおなじみデカルトと現象論のフッサールに始まり、メルロ=ポンティなどにも取り上げていく。そして彼らの考えをいかにAIに落とし込んでいくかについて、エージェントアーキテクチャ等の具体的な理論も取り上げていく。
ただ、知識の羅列が多く、上の『正義』本に対して読者がじっくり課題に対して考えてみる体験を得るのが難しい本だと自分には感じられた。まさに「塾」のような雰囲気。巻末にはおまけで実際の勉強会で出た意見と、それに対する筆者の考察が述べられている。むしろこちらのほうが読んでいて刺激された。