(参考)新しい知識・技術の学習について
◎手を動かして繰り返す
本実習では繰り返し,「教科書・記事を読んで実際に入力する」という表現がでてくる.
これは,1回だけ読み, 1回だけ入力すればそれでいいというものではない.
諸君が実習しているのは一種のスキル(知識を伴った実務的能力=技能)である.
多くの人にとって,1度すらっと読んだり,1回入力するだけですんなり理解でき, 次からどんどん指が動くようなことはない.とくに,過去獲得した別のスキルを応用できない,初めての技術体系の場合,1度や2度で身につくものではない.
ある技能が別の技能に転移して,比較的容易に身につくという例はある.たとえば囲碁のプロが将棋も有段者だったり,二輪自動車のレーサーが四輪でもすごく速かったりする (両方でトップになれるかどうかは別問題) .
しかし,ことコンピュータに関しては,隣接する技能がほとんどない.
強いて言えば,ピアノなどをやっていれば指がよく動くのでタイピングの習得は早いとか……
ではどうすればいいか.答えはシンプルだ.
何度も何度も読み直し,間違いも含めて繰り返す
これはシンプルかつ最強の学習メソッドなのだ.
◎「質より量」+「強化学習」=最強の学習メソッド (方法論)
同じ部分,同じコマンドを何度もなぞっていくうちに,入力効率が上がる.
→ 入力や読み取りのような単純作業の認知負荷が減少する.
→ 頭に余裕が生まれる.
→ 今学習した知識・技術を新しい問題に当てはめてみよう,あるいは組み合わせてみようという気になる.
一つのコマンドや機能ではできないが,組み合わせて,取り組んでいる課題や問題に対処できるようになる.
さらに,より大きなシステムを作り,より大きな問題を解決しよう, と考えられるようになる.
◎「スキルの質の転換」=メタ認知
上のことを別の言い方をすれば,使っているスキルに「質の転換」が生じ,認識の階層が上がる.
「自分ができる/わかっているのはこれだけ」=「知の知」
→ 「自分が何をわかってないのか/何ができないか」=「無知の知」
→ 自分が今,どのレベルにいてなにが必要か=上位マップの生成
※こういった,階層が上がった認知をメタ認知という
階層を上がっていくと,人に伝えたり後進を育てることができる.他の分野とコラボレーションして,新しいスキルや価値観を提案・提言することができる.
――これが生きた知識・技術・技能というものだ.
学習したことが生きた知識・技術になるまで遠い道のりではある.しかし,ただ雲の上を見上げるだけではそこには行けない.
何度もしつこく繰り返しながら階段を上がっていけば,やがて雲の上に出ることも不可能ではない.
※しつこさは技術者,開発者,科学者にとって最強武器
以上.
2023/6/28