2.5考察の方法
測定結果,検討課題の結果を記述し,それを整理してまとめた後には考察を書く.考察は不慣れな人には難しく,何をどう考察していいのかわからなず戸惑う人も少なくないだろう.
考察はまさに人間の叡智と言ってもいいので,単純に「これだけやってればいい」という方法はない.ここでは 1 つの考え方を例示しておく.
◆考察ってなに?
そもそも考察とは何かを考えてみよう.
レポートにおける考察とは,以下のような一連の応用的考究である.
(1) 実験結果の中から特に留意するべき点に着目し
(2) それの問題 / 課題となる事項を洗い出し (予想外の誤差や現象 )
(3) 問題の原因を推定 (何らかの根拠を示して ) し
(4) 推定から原因を取り除く方法を考えるつまり結果やまとめをよく眺めて,何か 1 つでも引っかかるものがあればそれを取り上げて集中的に検討してみるということ.
これを一言で言えば,「広く浅くではなく狭く深く考える」ということだ.
◆考察のポイント
ここで重要なポイントがある.
1 つは推測 / 推定するにはなんらかの根拠が必要だということ,
もう 1 つは誤差を論理的に考慮する必要があるということ.
◎根拠: 根拠には 2 種類ある.
(a) 確立された理論に基づく根拠,
(b) 得られた結果,事実に基づく根拠.
なにかを推測する際には,いま自分が考えているのはどちらの根拠が使えるかを考えるとよい.
◎誤差: 誤差は,まず数値化できていることが第 1 段階.
数値を示さずに「誤差が大きい」「誤差がほとんどない」などと言ってはならない.
誤差を数値化するのは計測工学の基本.これを怠らないこと.
特に計測誤差を指摘する場合は注意する.
※計測誤差:測定系に起因する誤差.メーターの読み方など人的な要素も含まれる.
実験値の誤差を扱っていて,系統誤差を考慮しても原因が不明な場合「よくわからないから計測誤差じゃ
ないか」と思いつくことはあるかもしれないが,それだけでは「当て推量」にしかならない.
※系統誤差:実験材料や実験方法そのものが含む誤差
これを根拠立てるには,計測系全てのどこにどれだけ誤差の可能性があるのかを把握し,それを考慮する必要がある.
■■ 実験の成否について■■
実験レポートでありがちなのが「~だったのでこの実験は成功だった」といった,実験の成否に関わる結論付けである.
本実験のように原理がすでに判明していて,観測・測定によってその原理・理論を確認することが主たる目的である場合,実験の成否を問うことにあまり意味はない.
なぜならば,理論が確立している現象の確認実験が,ほぼ理論どおりの結果になるというのは当たり前だからだ.
理論値・想定値と離れた値が出てきた時は「失敗」ではなく,むしろ深く考察するチャンスである.
実験データが理論を再現できなかったのはなぜか,どうすれば改善できるのかを丁寧に調べ,具体的に考える.
こういうことを繰り返しているうちに自然と実験的な考察態度が身につく.
これは大学高学年での研究活動において重要な能力である.