■■エピソード(3) 開闢■■
大規模トラブル発生から 2 週間.原因を探る糸口はまだ見つからない.突然,社長からの SNS メッセージ.フロアのあちこちで同じポップアップ音が鳴っている.社員全員に一斉配送されたようだ.
code: 一斉メールの内容
○○社の皆さん,この度の大規模トラブルに対し,各部署で迅速に
対応していただき,ありがとうございました.皆さんにお知らせしな
ければならないことがあります.
実はこのトラブルは計画された演習でした.
皆さんには申し訳ありませんでしたが,突然のトラブルにも関わら
ず,各部署が冷静に対応して下さったことに感謝いたします.中で
も,発生 2 時間で結成されたサーバ復旧タスクフォースは素晴らし
かった.彼らの活躍に拍手を送るとともに,果敢に大規模なトラブル
に立ち向かうガッツある人材が我が社にいることを,心から誇りに思
います.
システムの復旧はまだ続いています.より強く,危機管理レベルの
高い業務システムの構築を目指して,みなさんの協力をお願いしま
す.
今から 1 週間,復旧プロセスの分析を各部署で行って頂きたいと思
います.これからが全社危機管理のはじまりなのです
……なんということだろう.トラブルそのものが演出されたものだったとは…….まんまと騙されたという腹立たしさと,本物じゃなくてよかったという安堵が同時にこみ上げる.そう.いまこの瞬間に本物の大規模障害が発生してもおかしくないのだ.そう思うとゾッとする.
気を取り直してやるべき仕事を整理する.サーバ復旧タスクフォースの最後の仕事は,さらなる確実性を確保するため,シリアルラインの通信条件に合致するデータを,もう一度観測・記録することだ.レポートに,再確認したデータを追加し,報告書を仕上げ,早急に提出することだ.