106_実験レポートの講評・コメント
2020/6/22 by 990.fujii.daisuke.icon
★以下,皆さんのレポートを見た上での講評・コメントメモです.
すべて自分のこと,と思って読んで下さい
★は心の声です(^^)
◆形式:全体にきれいなレポート
本実験では「レポートは手書き」が伝統だった.
今回はオンラインゆえ,はじめてワープロOKにした.
結果からいえば,ほぼ全員が見やすく,きれいなレポートで驚いた.
表もグラフも綺麗に作成してあり,画像もうまく貼り込んであった.
★とても喜ばしく思います.
が,細かいところでの取りこぼしがかなりある.
各自再度チェックしてもらいたい.
<電気回路レポート自己チェック - Google フォーム>
▲▲ 複数回入力OKに設定したので何度でもチェック可能,編集も可能
■取りこぼしの例:
レポートに学番・氏名がない ◀◀ おい.だれだお前
レポート作成日・提出日がない ◀◀ 重要な証拠になる
本文にページ番号がない ◀◀ 通し番号は必ず!
目次がない ◀◀ 構成を確認する上でも大切
目次にページ数がない ◀◀ 目次の役目半減!
目次は読者に全体の構成を教えるだけでなく,
読者が読みたい項目にジャンプできるように,ページ数が必要
節/小節番号がついていない ◀◀ 流れが見えない
■他にもこんなのが:
フォントや表記方法が不統一( f0なのか$ f_0なのか)
節・小節と本文に適切な空行がないので見にくい
インデントしていない(ベタッと左寄せ)ので見にくい
グラフに必要な情報が記入していない
グラフに記入した数値と本文の数値が違う
ワープロはきれいに見えます.でも中身が伴わないと,
「ワープロの美しさにもたれかかったレポート」
になります.
中身を頑張ったからこそ,細かい形式をちゃんと整えよう!
指定をよく読んで準拠する
一般常識的にちゃんと整える
空行を活用,インデントを活用する
◎形式が整うと, 「ちゃんとわかって書いている感」がでる!
▼細部がいいかげんだと
「ちゃんとわかって整えていない感」
「なんとなくワープロにおまかせしてるだけ感」
が出て,全体としてマイナスイメージ.
★これは履歴書や企画書でも同じことが言えます
◆内容は論理の展開が大事!
実験レポートではデータとその説明,そして考察が命!
しっかりしたデータの提示と可視化,そしてその解説と考察が中心となって,「よいレポート」「よい論文」が構成されていく.
しかし!
実験データの提示までに書くべきことがある!
なぜその実験が必要なのか
それらの実験を通して,何を達成しようとしているのか
目的 → 方針 → 具体的な実験のプランと目標
▲▲ これは必須!
でないと「ただのデータの寄せ集め」になる
◆主課題・方針が抜けている件
今回は明確な3つの課題があったはず.
これを提示していない人がかなりいる!
いきなりRCやLC実験始めてもダメ!
まず,目的・目標・課題をどう設定するか?
今回は課題が3つ明示されている!
これを押さえておかなければ実験をやる意味がない!
RC過渡,LCf特,LC過渡を使って何をめざす?
次に,その課題をどうやって料理するのか?
▲▲ これが「方針」
この方針が不明確な人 ◀◀ 自分だと思ってチェックして!
例:大きな目的「電気回路の振る舞いを理解する」
▶▶ そこから急に「RC過渡特性」が始まったら「なんでRC?」となる
つまり,論理が飛躍している
具体的な実験を始める前に,方針は必須!
◀◀ もう一度,自分のレポートを見直してみて!
◆節構成で気になったこと
RC回路過渡特性はほぼ全員共通
つぎの節が,こうなっている人が何人も!
★友達と参照・相談しあってるのはOKだけど,鵜呑みにしてない?
「Q値の測定」と銘打ってLC回路過渡特性
「Q値の向上」と銘打ってLC回路f特
▲▲ これはちがうんじゃないか?
Q値,⊿fを直接測定できるのはf特測定しかない
わざわざ間接的な過渡特性を選ぶ理由が不明!
f特実験は,Q値向上実験ではない
まずは回路の特性値,$ Q_0, f_0, \Delta f を把握するのが目的.シンプル.
Q値100倍のアイデアは過渡もf特もすべて把握勘案した上で考える
つまり,別の節として立てるべし!
Q値100倍については下の方で.
◆内容で個別に気になったこと
目的や概要で** グループワークについて記述してる人
やってないことを書いてもしょうがないので不要!
どうしても書きたかったら「今回はやっていない」と明記するべき
同じく,LC回路f特で,「位相」をレポートしないのに書いている人
これはマイナス!わかってないのが丸出し!
やってないことは書かない.データにあったとしても,自分のレポートに書くか書かないか,自分で選ぶべし!
★位相データはQ値や⊿fとあまり関係ないんですよね……
条件と手順は抜かさないで!
回路図等は「テキストp.XX参照」でよいが,
条件は書くべし
手順も略さないで
手順を抜かすと結果の説明が面倒になる!
データの値名がテキスト通りになっていない人=古い参考データのノートを書き写してる人
テキストでは$ f_{0(a)}, Q_{0(a)},f_{0(p)}……となっている
レポートで「$ f_{0(1)},f_{0(2)}……」となっているのは,古いレポートデータの記述をなにも考えずに模写している証拠
データの記述は今のテキストとは違う部分があるので注意!
テキストをよく読んで!
$ Lの値の計算値が間違っている人
20mH~30mH 近辺のハズ.
つまり$ 2\times 10^{-2}H近辺
桁が違ったら絶対間違えてる!
103 検討材料・参考実験の「数値の目安」を参考に!
自分だと思って再度チェックしてみて!
回路図がどこか明示していない人
テキストp.◯◯と参照していい,けれど,省いてはいけない!
$ R, E_0, v_1, v_2など,回路図がなければ読み手はわからない!
本来すべてレポートにも描くべきだが,時間を考慮して「テキスト参照でいい」とした
でも,省かないで. ▶▶ レポートが謎のメモ書きにしないために.
◆考察について
各実験について,丁寧にまとめて,それについて考察するのは大切!
考察こそレポートの醍醐味といっても過言ではない!
皆さんの考察は甘い!!!
「たぶんこうじゃないの」と思いついても,そこで終わったら✘
具体化しないと!
実験のデータに基づいて考えること.
テキストから理論式を引用するだけ:✘
実験結果ではないことのアイデアも✘
誤差についてなら, ▶▶ 必ず数値化!誤差率を出す!
気づいた1つの小さな事柄でいいから,
アイデアを明確に,
論拠,根拠を明確に,
実証について具体的に
数字を出す!
「全体の考察」はおまけでいいです.
全体の考察:実験に共通な項目についてなにか思いついたら書く
または行った実験には直接関係ないが,関連して考えたこと
なければ書かなくていい
特定の実験や数値について思いついたら,その実験の考察で書く
▶▶ 無理に書く必要はなし
下手な感想文や,個別と同じことの繰り返しなら必要なし
◆RC回路の誤差について
RC回路の過渡特性は単純だが,重要な要素がある.
それは「立上り/立ち下がり遅延」.
ファンクションジェネレータの「仕様」
テキストに「18 ns」と明記してある
▶▶ 見逃している人がほとんど!
$ 18ns =0.018\mu s
この18ns が$ \tauに影響しないわけがない!
ついでに:RC過渡特性実験で,$ R=1 k\Omega, C=1000 pFはなぜこの値かという問があった.
これは$ \tau = R \times Cの計算がやりやすい
$ Rはテスタでの計測がやりやすい
比較的よく使われる値なので,制度の良い製品を入手しやすい
などなどの理由による.
▲▲ 書き写さなくてもいいので,実用的なことも大切だと覚えておいてほしい
◆LCf特実験で気になったこと
上にも書いたが,位相差はこの課題ではレポートしない
一部やってくれた人はいる.やるのはいいが,目的が不明確かも.
なので,位相差についての記述,データは書かないほうが正解.
よけいなデータや数値を見せたら「この人わかってないだろ感」がでてしまう!
★正直,かなりがっかりします(^o^)
◆$ Q_0値の誤差について
測定した$ Q_0と,$ \Delta fから算出した$ Q_0の差が大きい場合.
「実験者の計測誤差」「計測機器の誤差」の理由が多いが……
◀◀ ホンマか??
例:$ Q_{0(a)}=18.8, Q_{0(m)}=22.8で前者を真値だと仮定すると,
誤差率$ = \frac{18.8 -22.8}{18.8}\times 100 = 21.3 [%]
▲▲ 計測系だけで20%も誤差があったらそれは計測失敗してる.
なので,他に要因があるはず.
なにか思いついたら,それを使って誤差率を埋めるための数値を考えて.
◆$ Q値100倍について
★いろいろ考えてくれました.興味深かったです.
最初の発想はシンプルでOK
▶▶ そこから緻密に詰めていく作業が足りてない!
大雑把なままで終わるのは理工系にあらず!
例えば……
■$ R \ / \ r'を小さくすればいい,という見方
今回の回路は外部$ R=0:これ以上小さくならない
$ r'は$ Lの内部抵抗 ◀◀ 固定(直流抵抗)ではない
◀◀ これを小さくするとは具体的にどうする?
■$ f_0を大きくすればいい,という見方
$ f_0 と Q_0は比例とは限らない.
$ Q=\frac{f_0}{\Delta f}のうち,\Delta fは固定とは限らない
■$ Lを大きくすればいい,という見方
線径,巻数,巻き方で$ Lは変えられるのは確か.
が,$ Lが変われば$ r'も変わる!
◀◀ 問題はパラメータ!
なにかの作用の結果を直接パラメータにはできない
$ \omega_0 , f_0, L, r', C, R, \Delta f ◀◀ 直接変更できるのはどれ?
理論式をよ~~~く見ればわかる!
特定のパラメータを選ぶ場合:
なぜ他のではなくそのパラメータなのか,理由が必要.
たまたまでは✗
★くじ引きじゃないんだから
多重にパラメータがある場合:(非決定的)
★2元方程式で拘束式が1つしかないような感じです
a. すべての組み合わせを網羅するか
手間がかかる,評価も難しくなる
b. どれかのパラメータをある前提で固定するか
根拠・仮定が必要
結果が目的に達しないかも
そのときは前提を変えてやりなおし
▶▶ こうやって進めていくのが「実験科学」というものぢゃ.
◆最後の「結論」に儀礼はいらない
この規模の実験で,わざわざ結論をまとめる必要はない
★みっちり20ページといった論文にはある方がいいです
もし結論を書くなら,
それまでの結果と考察をシンプルにまとめたもの
▲▲ これしかない
実験を「いい感じにまとめる」必要はなし
「成功だった」「失敗だった」なども不要
→ ひとつの実験では成功/失敗は判断できない
~~を理解できた,○○を学べた,等
→ 結論ではなく儀礼的感想 ◀◀ ★理解した?ホンマに?
★あなたの理解度をテストしたくなります
もし結論を書くとすれば,
この実験における到達点を確認し,
測定値・算出値をまとめ,
残された/または発見された課題を指摘し,
その実験の次に何をするべきかを提言
▲▲ 本テーマでここまで書く必要はない.
#001_出席・質問・レポート指導(Teams)
#002_レポート提出方法(manaba)
#102_目標と課題
#103_検討材料・参考実験
#104_レポートの指標
#105_レポート指導メモ