103 検討材料・参考実験
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3つの課題をクリアするにはどうすればいいか.
どんなデータをとればレポートになるのか.
そのヒントを考えてみましょう.
電気回路の基本
電気回路には基本となる 回路構成と回路特性があります.
(1) RC回路:過渡特性,周波数特性
(2)LCR直列回路(LC回路):過渡特性,周波数特性
(3)LCR並列回路(LC回路):過渡特性,周波数特性
これらはそれぞれ電気回路理論の基礎となる大切な特性です.
※LCRとLCは同じ意味: テキストでも本コンテンツでも,LCRと言ったりLCと言ったりしていますが,Lは内部抵抗$ r'を含むので,明示的に外部$ RがないLC回路でも,理論的にはLCR回路と同じ意味です.
本実験で扱うLCR回路は外部$ Rがないので,見た目上はLC回路です.
Hint (1) 本テーマのメインターゲット
この実験はLCR直列共振回路の周波数特性をメインターゲットにしています.
つまり, LCRの周波数特性実験はMUST ということですね.
Hint(2) 一つの回路だけでは済まない
LC直列回路の実験だけでは判明しないことがあります.例えば,
$ C(キャパシタンス) ◀◀ RC回路の$ \tauから算出(テキストでは$ C_{(a)})
※$ Cの公称値は実験条件として与えられています.しかし公称値は誤差を含むため,より正確な値は実験を通して算出します.
※ただし測定方法,算出方法によっては誤差が大きくなることも!
▶▶ つまり,実験系と素子の精度を確かめるには,RC回路の過渡特性が適しているといえます.
$ Lが加わると理論も特性も複雑になります.CRだと単純です.
◀◀ プロローグで言っていた,「条件はシンプルから始める」ということにもつながっています.
Hint(3) 同じ値($ f_0, Q_0)は違う実験でも得られる
LC直列回路の過渡特性はメインターゲットではありません.
しかしこの実験では周波数特性とは別に,$ f_0(\omega_0), Q_0, Lの値が求まります.
▶▶ この実験をすれば,周波数特性から得られた値と比較し,より詳しい考察を加えることができます.
※ちなみに,このコンテンツでは紹介していませんが,テキストには「RC回路の周波数特性」(付録A.4(p.23),A.5(p.24))も掲載されています.LC回路のf特と比べれば特性もシンプルなのがわかると思います.
Hint(4) 無理難題には無茶な発想を
「$ Q_0を100倍にしろ」というのははっきり言って無理難題です.
正解はありません.
これに答えるには理論に基づいた上で,$ Qを構成する要素について,シンプルに考えていくしかありません.
しかし,現実にはいろいろな困難さが生じます.
この困難さを想定することが,最も困難です.
そして想定された困難をどうやって乗り越えるのかは,あれこれやらないと仕方がありません.
が,ゴールがもし,いまいることの延長上にないのであれば,とんでもない要素を取り込むとか,ある意味非常識な発想をする必要があります.
そしてぶっ飛んだ発想を無理矢理でも理論や現実に着地させていきます.
この発想の自由さと,無理矢理に現実にもってくる強引さは,後々の研究活動にとても大切です.
ひとつのレポートをさくせいするのには短い時間しかありません.
限られた環境,限られた時間の中で,自由に発想し,それを理論や現実に着地させる方策を,ぜひ考えてみて下さい.
※これらのヒントは,「かならずこうしなさい」という指示ではありません.自分でなにがよいかを考えてください.
以下に,参考実験(結果データを含む)を示します.
参考実験(1): 210 RC回路の過渡特性(p.7~)
R(抵抗)とC(コンデンサ)だけのシンプルな回路に方形波を印加し,波形変化を観測します.
ここからはRC回路の時定数$ \tau が測定できます
時定数$ \tau からは,$ Cの推定値$ C_{(a)}が求まります
参考実験(2): 310 LC直列回路の周波数特性(p.11~)
L(コイル)とCを直接につなぎ,サイン波を印加して周波数を広範囲に変化させ,振幅と位相の変化を観測します.
※今回は「位相特性」については課題としていません.
テキストには書いてありますので,読むだけでも読んでおいて下さい.
共振周波数$ f_0 とそこでの最大振幅値すなわち$ Q_0 が測定できます
$ Q_0から共振の半値全幅$ \Delta fを推定できます
インダクタンス$ L が算出できます
半値全幅$ \Delta fを測定できます
$ \Delta fからもうひとつの$ Q_0が求まります
参考実験(3): 410 LC直列回路の過渡特性(p.31~)
LC回路に方形波を印加し,共振の様子を観測します.
LC回路の時定数$ \tau が測定できます
インダクタンス$ L が算出できます
共振周期から共振角速度 $ \omega_0つまり共振周波数$ f_0 が求まります
算出した値から$ Q_0が求まります
 ☆$ Q_0は同値☆ 上の実験で求められる$ Q_0は,理論的には同値のはずです.もし算出した結果が違えば,考察の対象になるでしょう.
参考:検討するべき値の参考値一覧
※具体的な測定データは各参考実験のベージに掲載されています.以下は,
どういう値を測定・算出するべきかを整理し,値のオーダー(概数)を示したものです.
決して答えではありません.
計算値が参考値から桁違いだったらどこかでミスしているので再確認!
  https://gyazo.com/33e7900480439f6df84761e707ff5153
▶▶ 最後に104 レポートの指標を説明しておきます.
2020/5/20