ムーンシャイン
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概要
有限散在型単純群で最大の位数をもつ群(モンスター群)の既約表現と、j-不変量のフーリエ展開の係数の間になんらかの関係がある、という実在の数学理論、ムーンシャイン理論を題材にした数学SF。 前年に発表されたSF作品が収録される年刊SF傑作選に、書き下ろしで収録された異例の作品でもあります。
おすすめポイント
ギリギリ理解可能なところから、原理的に理解不可能な地平へと一歩踏み出す、その清涼さ。
本作の冒頭では群論の数学的定義が念入りに二度提示され、本作が数学に明確に基づいた作品であるということを断っていますが、それにしても本作は難解。それもそのはず、この作品は現代科学が歩んできた道のりをそのままひっくり返した作品なのです。
たしかに数学がわからないと難しいかもしれませんが、この作品を完全に理解するには物理学の知識も必要となるので、そもそも理解しきるのは非常に困難です。わからないところはわからないとして、物語の美しい情景を楽しむのがこの作品に対する一番バランスのいい姿勢なのかなと思います。
そしてこの作品が難解であるのは、最後の場面が原理的に理解不能であるから、ということに集約されていきます。数学と物理学の知識を総動員して読み解いても、最終的にこの作品は原理的に理解不能な地平へと進む少女をただ見守るしかないのです。
よくわからなくても、その物語の美しさに魅了される。はじめて読んだときの感想はそんなものになるかと思います。もしわかろうとするのであれば、この作品はどこまでも理解できるような作りにはなっているのですが、その道のりは大変険しいものですので、志すのであれば十二分に気をつけてください。
その姿勢に十分報いる、懐の深い作品であるということはたしかです。
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