形式体系
形式体系(けいしきたいけい、Formal System)は、数学のモデルに基づいた任意の well-defined な抽象思考体系と定義される。エウクレイデスの『原論』は史上初の形式体系とされることが多く、形式体系の特徴をよく表している。その論理的基盤による体系の命題と帰結の関係(論理包含)は、他の抽象モデルを何らかの基盤とする体系から形式体系を区別するものである。形式体系は大きな理論や分野(例えばユークリッド幾何学)の基盤またはそのものとなることが多く、現代数学では証明論やモデル理論などと同義に扱われる。ただし形式体系は必ずしも数学的である必然性はなく、例えばスピノザの『エチカ』はエウクレイデスの『原論』の形式を模倣した哲学(倫理学)書である。
形式体系には形式言語があり、その形式言語は基本的な記号(シンボル)で構成される。形式言語の文(式)は公理群を出発点として、所定の構成規則(推論規則)に従って発展する。従って形式体系は基本的な記号群の有限の組み合わせを通して構築された任意個の数式で構成され、その組み合わせは公理群と構成規則群から作り出される1。 数学における形式体系は以下の要素から構成される:
式を構成するのに使われる有限個の記号(アルファベット)。
文法。すなわち、正しい式を記号から構成するための方法。例えば、論理学で言えば任意の式(記号を適当に並べたもの)が整式かどうかを決定する何らかの手順が存在する。
公理群または公理図式。各公理は整式でなければならない。
推論規則群。
定理群。
形式体系が帰納的であるとは、公理群と推論規則群が(文脈によって)帰納的集合または帰納的可算集合である場合を意味する。
人によっては「形式主義」と「形式体系」をほぼ同義に扱うが、「形式主義」は数学や論理学以外にも適用される用語である。例えば、ポール・ディラックのブラ-ケット記法は物理学における形式主義である。