舞台稽古メモ(05):逆算する役者
心→体→言葉.
では,この順番を芝居でどう使うのか???それは,
逆算だ!
◆逆算の世界へようこそ
もう少し砕いて言うと,
台詞や仕草や立ち位置について,そうする理由・道筋をたどって考える
この逆算こそ,役者の大切なスキル(技術)なのだ.
たいていの芝居では台詞が台本に書かれていて,言葉は最初に決められている.
※そうしないといけないわけじゃない.台本のない芝居もある
心→体→言葉の順番で言うと,
台本には最後の順である言葉だけが定義されていて,その前の心と体が不在
なのだ.
「心と体が抜けている」
これは普通の生活ではありえない.とても変な状態.それを埋めるために,役者は逆算するのだ~のだ~のだ~
◆逆算をしてみる
実際にやってみよう.ここに台本があり,あなたの台詞がある.たとえば
「自分が死ぬときのことは分からんけど 生き様で後悔はしたくない」(『呪術廻戦』より)
←この言葉を吐く時,体はどう動いてるのか.位置関係はどうか.
←この体の反応は,どんな心の状態からきているのか.
つまり,言葉←体←心と,元の順序を逆に辿っていく.
――上の台詞,自分で心までたどり着けただろうか.
※もちろん状況によって心は変化する
心までたどり着けたら,体→言葉に戻していく.そうすればただの台詞が「本当の言葉」になる.
これはやってみないとわからないので,ぜひすべての台詞を丁寧に逆算してみてほしい.
◆深い逆算をしてみる
ある程度言葉から心の逆算をすると,心や感情について,さらに次の逆算が湧いてくる.
←その心・感情はなぜ起きたのか.
誰かが馬鹿にした言葉を聞いたからか?
誰かに褒めてもらったからか?
美しい景色を見たからか?
惨たらしい戦場を目の当たりにしたからか?
相手に悲しそうな瞳で見つめられたからか?
なにか理由があるはずだ.キャラによってはその理由に自分が気づいていないことも考えられる.
※そうなるとかなり難しい芝居になる
いろいろ検討した結果,なにも考えずになんとなく台詞をしゃべることが一番よかった,なんてことも可能性としては,ある.
だから,あんまり深く深く追求しなくても,言葉←体←心の順に逆算ができれば,とりあえずの芝居は可能だ.
けれども,この「感情の理由」は,一度は考えるべきだと思う.
※とにもかくにも,どんなに小さな役でも,一度は考えてみてほしい.
なぜか.
→ 次回は「感情の理由」をなぜしっかり考えるべきか,について話したい.
【今回のまとめ】
台本に書いてあるのは心→体→言葉の結果だけ
役者は言葉=セリフから体 → 心と逆算する
そこからスタートすれば台詞は「本当の言葉」になる
さらに心の理由を考えるのも大切
以上.
2022/5/1, 初出:2012-09-11