この図の説明
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タイトル:「大域的アトラクターのカオス的遍歴」が「気づき」と「意識の流れ」を生み出す。
解釈:
この図は、意識と気づきのプロセスを大域的アトラクターの概念を用いて説明しようとしています。図の中心にある循環的な構造は、意識の流れと気づきの関係性を表現しています。特に注目すべき点は:
1. 気づき(Sati)から始まる認識プロセス
2. カオスと無明の関係性
3. 行・志向性による意識の展開
4. 循環的な構造による永続的な意識の流れ
主要な用語の説明:
1. 大域的アトラクター:
システムが時間とともに収束していく状態や軌道のこと。ここでは意識の状態を表現する数理的概念として使用。
2. 気づき(Sati):
仏教用語で、現在の瞬間への気づきや注意を意味する。「存在の現前」と同義。
3. カオス:
予測不可能な複雑な振る舞いを示すシステムの状態。ここでは意識の不確定性を表現。
4. 縁起生:
仏教の基本概念で、すべての現象は相互に依存して生起することを説明する原理。
5. エポケー:
フッサールの現象学における重要概念で、判断の保留・括弧入れを意味する。
概念の説明
それぞれの概念について詳しく説明していきます:
1. 「気づき」=「存在の現前」
- 仏教用語のSati(サティ)の訳語
- 現在の瞬間に存在するものをありのままに認識する状態
- 意識が対象と出会う最初の瞬間の直接的な認識
Miyabi.icon三味瞑想、ヴァレラ、身体化する心 2. インスピレーション:神のお告げ
- 創造的なひらめきや直観的な理解
- 西洋思想では神的な啓示として理解
- 意識を超えた次元からの洞察
3. アリストテレス:「存在の現前」に対する驚き(タウマゼイン)
- 哲学の始まりは「驚き」にある
- 存在そのものへの根源的な問いかけ
- 知的探求の出発点としての驚きの重要性
4. ヴェーダ:「非有非無」
- インド哲学における究極的実在の概念
- 存在でもなく非存在でもない状態
- 二元論を超えた真理の表現
5. ブッダ:生じては滅し、生じては滅する
- 諸行無常の教え
- すべての現象の無常性・変化の必然性
- 執着からの解放の基礎となる洞察
6. 四念処:心・受・身・法についての気づき
- 仏教の瞑想法の基本
- 身体、感受、心、法(現象)の観察
- マインドフルネスの原型
7. 縁起生・怨念念起・識所縁唯識所現・唯信
- 縁起生:相互依存的な生起
- 識所縁唯識所現:意識による現象の顕現
- 唯信:純粋な信仰の状態
8. デカルト:cogito ergo sum(我思う、ゆえに我あり)
- 近代哲学の出発点
- 懐疑から導かれる確実な認識
- 主観性の確立
9. フッサール:『エポケー』、純粋意識
- 判断停止による現象学的還元
- 意識の志向性の解明
- 純粋意識による本質直観
10. ハイデガー:『存在』=『現前性』
- 存在の意味への問い
- 現存在(Dasein)の分析
- 存在の時間性と歴史性
11. W ジェームズ:意識の流れ・純粋経験
- 意識の連続的性質
- 経験の直接性の重視
- 実用主義的真理観
12. 西田幾多郎:純粋意識・絶対矛盾的自己同一
- 直接経験の重視
- 主客未分の状態
- 矛盾を含んだ統一的理解
13. カール・ポパーの3世界論
- 第1世界:物理的対象の世界
- 第2世界:主観的経験の世界
- 第3世界:客観的知識の世界
14. 大森荘蔵:立ち現れ一元論
- 現象の直接的経験の重視
- 物心二元論の否定
- 経験主義的認識論
15. 山口瑞風:縁起生と判那滅
- 仏教的世界観の現代的解釈
- 刹那滅の理論
- 存在の無常性の理解
16. 山内得立:ロゴスとレンマ
- 東西思想の統合的理解
- ロゴス:論理的思考
- レンマ:直観的把握
これらの概念は、東洋と西洋の思想を橋渡しし、意識と存在の本質を多角的に探求しようとする試みを示しています。特に注目すべきは、これらが単なる理論的構築物ではなく、人間の意識体験の本質を捉えようとする実践的な探求であるという点です。