「脳科学×ブッダ」から見えて来たもの
情報というプロセスの存在論
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理論化したのがフリーマンであり、「プロセスの存在論」の元祖がブッダ
実体の存在論
唯物論とか
プロセスの存在論
仏教などMiyabi.icon下のスライド
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全身から入る情報は電気信号として脳の中を駆け巡り、この時、それぞれの神経細胞がお互いに電気信号を受け渡し、作用し合う。この時、脳全体を巻き込む大きな流れが生じるのだが、これを「大域的アトラクター」と呼ぶ。「大域的アトラクター」とは「気づき」の本体なのだ。そして「気づき」の断続的な連鎖が「意識」となる。
Miyabi.icon行動・知覚サイクルは、能動的推論などによって理論化されている
「気づき」は、人間の知識・文化の総体を形成していく。
これを整理し体系化するところに、松岡座長の唱える「編集工学」の出番がある https://scrapbox.io/files/6728b063302e8b493ad9029a.png
### 1. **“あれ”と「大域的アトラクター」**
- 「“あれ”」は、ジェームズの「純粋経験」として捉えられ、言語化される前の感覚的な認知、いわば“直接的な経験”を指します。これは、フリーマンが「大域的アトラクター」と呼ぶ意識形成の根底にある“気づき”のようなもので、個別の神経活動が同期して生まれる脳全体のダイナミックな活動とされています。
- 「大域的アトラクター」は脳全体のシステム的な秩序のことで、これは単なる刺激応答ではなく、統合された一連の知覚の流れ、いわば意識の本質であるとされます。この統合が、断続的に続くことで「意識」となると述べられています。
### 2. **「編集工学」と「気づき」の整理**
- ここで「編集工学」という概念が出てきますが、これは松岡正剛氏の独自の視点で、情報や知識を体系化し、人間の「気づき」や「知」を拡張するための技術です。気づきを連続的な意識へと繋げる中で、編集工学はこの「気づき」を整理・体系化し、文化や知識の形で蓄積する手段とされています。
### 3. **「言語」と「大域的アトラクター」のズレ**
- 文章では、意識を言語で表現する際に生じる「ズレ」についても触れています。大域的アトラクターの中での経験や気づきは、言語に翻訳され、脳内に物語回路として蓄積されますが、実際の体験と知覚には約0.5秒のズレが生じるとされています。このタイムラグによって、思考と感覚の微妙なズレが生まれ、人間の体験は常に「少し前の記憶」のように感じられるという洞察が提示されています。
### 4. **ブッダ思想とフリーマン理論の結びつき**
- 浅野氏は、フリーマンの理論がブッダの「諸行無常」「諸法無我」「一切皆苦」といった三法印や「十二縁起」に対応していると述べています。特に「諸行無常」は、すべてが流動的で変化し続けるプロセスであり、物質的な実体は存在せず、活動の過程が唯一の現実であるという仏教の世界観を強調します。
- フリーマンの行動-知覚サイクルもこの無常観と合致し、脳内のニューロン活動が循環的に作用し、経験が絶えずリセットされ、新たな知覚・行動が再創発されるモデルとされます。浅野氏は、こうしたモデルが「自由」の概念に結びつくと考えます。これは、「自らに由る」という意味の自由であり、過去に縛られない、新たな自己を生み出す力として解釈されています。
### 5. **全体のまとめと「卓袱台返し」的認識の変容**
- 最後に松岡座長は、東洋思想のフレームワーク、特に仏教が21世紀における認識方法の鍵となると示唆しています。この講義は、現代の脳科学と仏教哲学を大胆に結びつけ、人間の意識や記憶のプロセスを理解する新しい視点を提示しました。
このように、浅野氏は脳の活動と仏教的なプロセスの世界観を重ね合わせ、意識や自己についての理解を深めようとしています。
Miyabi.icon世界モデルを持つ人間は予測と経験の束であるわけだが、予測と経験のどちらも、単にプロセスの、ここでいう大域的アトラクターの中にしかない。
循環的なプロセスの存在論としての仏教と、その認識モデルとしての受
能動的推論との関連
フリーマンの行動-知覚サイクルと能動的推論(アクティブ・インフェレンス)は、どちらも知覚と行動が循環的に結びつき、環境への適応や知覚の更新を図るプロセスとして共通していますが、それぞれ異なる視点で説明されています。
### 1. **フリーマンの行動-知覚サイクル**
- フリーマンの理論では、脳は外部刺激に対して受動的に反応するのではなく、行動と知覚が相互作用することで、環境との調和を図る動的なプロセスと見なされます。脳は「行動」が先にあり、その行動によって生じる知覚を元に再調整し、次の行動へと繋げるフィードバックシステムとして働きます。
- このサイクルでは、脳内のニューロン集団が循環的な活動を行うことで、大域的アトラクターが生じ、意識的な知覚や意図が形成されるとされています。特に、行動が次の知覚の基盤を提供するという視点は、フリーマンが強調した脳のダイナミックな自己組織化と一致します。
### 2. **能動的推論(アクティブ・インフェレンス)**
- 能動的推論は、予測処理(Predictive Processing)の枠組みの一部であり、脳が「予測」を用いて行動と知覚を調整するプロセスを説明します。脳は環境の状態を推測し、事前の信念に基づく予測と実際の知覚との誤差(予測誤差)を最小化することで、知覚と行動を調整します。ここで、予測誤差が大きい場合、脳は信念や予測を更新し、次の行動に繋げることで環境との適合を図ります。
- 能動的推論の特徴は、脳が意図的に「予測誤差」を減少させる行動を選択し、自らの環境に働きかける点にあります。言い換えれば、環境を「操作すること」も、予測誤差を低減し知覚を安定させるための手段となるのです。
### 3. **行動-知覚サイクルと能動的推論の関係**
- 両者は、知覚と行動の循環的なプロセスであり、脳が単なる受動的な情報処理装置ではなく、環境に積極的に働きかけている点で共通しています。フリーマンの行動-知覚サイクルは、脳の自己組織化により、意識や知覚が形成される過程を強調しており、環境への適応が自然発生的に行われるモデルです。
- 一方、能動的推論は、予測誤差を最小化するための意図的な行動選択という形で環境適応を説明します。脳が環境に対して期待を持ち、その期待に合わない場合に修正を行うプロセスとして考えられます。このため、能動的推論は行動-知覚サイクルを理論化し、予測という視点を加えることで、より定量的に理解する試みといえます。
### 4. **共通点と相違点のまとめ**
- **共通点**: 両者とも行動と知覚がフィードバックを伴うループ構造であり、環境に対して能動的に適応している点。
- **相違点**: 行動-知覚サイクルはニューロン活動のダイナミクスに基づくモデルで、能動的推論は予測と誤差修正に基づくモデル。後者は、脳が意図的に環境への働きかけを調整するメカニズムも含みます。
このように、フリーマンの行動-知覚サイクルは「行動が知覚を形成する」という生物学的なメカニズムを強調しており、能動的推論は「予測に基づく誤差修正」を取り入れたプロセスとして位置づけられると考えられます。