政府
広義には立法,司法,行政など一国の統治機構全体をさし,狭義には内閣およびそれに付属する行政機構のみをいう。 古来どのような人間社会においても,権力組織体である政府的機構が存在し機能しているが,近代国家の出現はその画期的発達をもたらした。すなわちイギリス,フランス,アメリカなどにおいては,J.ロック,J.-J.ルソー,フェデラリストなどの主張を反映して,国民の意思を代表する議会を中心とする政治機構がつくられ,政府は立法機関をはじめとして必然的に司法,行政両機関をも包含すると広義に考えられた。今日,これらの諸国においては,政府は国家の存続や活動を維持するための動態的な国家権力の作用とみなされている。しかしながら,近代に入ってもなお皇帝の大権が広範な影響力をもっていたドイツにおいては,行政府の有する権限も強力であり,国法学上政府は狭義に解釈されてきた。日本においてもこれと同様であった。すなわち国家構造上,三権分立がみられなかった時代から表面的には立憲制になった明治憲法制定後にいたっても,政府は議会や政党との対比において考えられ,しかも天皇の大権を背景にした内閣や行政機関と同一視されてきたのである。この影響を受けて,一般に政府という語は日本では狭義に用いられている。 public.icon