今原岳さんがAICE Award 2022を受賞しました
本学大学院工学研究科 博士前期課程2年 今原岳さんが,3月6日にAICE Award 2022(活動表彰)を受賞しました.
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研究課題名:AICE-PM/PNサロゲートに対応した粒径分布モデル検証実験
本研究は,AICE(自動車用内燃機関技術研究組合)を通じて実施している自動車会社との共同研究です.NEDOのグリーンイノベーション基金事業/CO2等を用いた燃料製造技術開発プロジェクトとして,カーボンニュートラルな社会を見据えつつ,合成燃料利用時における背反事象の改善に関する技術開発に取り組んでいます.
以下,今原さんが提出した審査資料に基づき,取り組みを紹介します.ただし,研究結果等は,非公開のためにここでは紹介できません.
現在,今原さんが所属する反応性ガス力学研究室では,実機エンジンの設計に利用可能な微粒子生成予測モデルの開発に取り組んでいます.開発されたモデルは適切に検証が行われる必要がありますが,実機計測結果だけでは関与する現象が多く,どこに問題があるのか判断が難しいです.そこで今原さんは,燃料は予め気化した上で定常的に伝ぱ火炎を維持し,粒径分布の計測が可能な実験装置を新たに設計制作しました.本装置を用いて実験を行い,特に噴霧・蒸発モデルに依存しない微粒子生成予測モデルの検証を達成しました.
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今原さんは学部4年から研究室に所属しており,本実験に用いる装置をすべて設計製作しました.基本的には学内の工作機械を用い,実習工場の指導を受けながら自作したものの,一部の部品は内製できませんでしたので,それらは県内にて必要な工作機械を有する企業に相談して制作しました(株式会社テオリック様のご協力).実験条件は自ら考案し,指導教員を通じて共同研究グループに提案しています.また,同様の装置を有する海外の研究者に連絡をとり,助言を受けながら研究を実施しました.
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取り組んでいる研究では実用燃料を対象としており,その中には高沸点成分も含まれています.制作した装置では,不安定性の影響を受けやすい過濃予混合火炎を安定して定常化させるために焼結金属を用いており,その温度管理が非常に難しかったそうです.多くに手作り部が多かったものの,冷却システム,実験前の段取り等を工夫して,実験値を取得することができたとのことです.結果,世界的に貴重な実験結果が取得されています.さらには,今後の利用が期待される次世代燃料について新たな知見を見出しており,燃料設計の観点から今後の解明が期待されています.
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以上の活動が,AICEから若手の学生および研究者に対して模範的であり,行動力およびエンジニアとしてのコミュニケーション能力も素晴らしいと評価されて,受賞に至りました.
今後,受賞者の活動は自動車技術会の会誌等を通じて広く紹介されてゆくとのことです.
なお,反応性ガス力学研究室は富岳産業利用課題(AICE・JARI・JAXA・大分大学)にも参画しており,本研究で検証されたモデルが実機の大規模計算に使用されています.