イーガン作品のヒント
最初に長篇を読むと面食らうので、はじめに『しあわせの理由』を読んで雰囲気に慣れておくとよい。
妙に難しい数理的な概念は頻繁に登場する。
もちろん、作品の本質的な議論に関わるために導入されている場合が多いが、そうでない場合もある。見分けるポイントは、きちんと説明しようとしているかいないか。きちんと説明しようとしている場合は本質的、適当に流しているようだったらただの小説的装飾。ここの区分はかなり意識して書いている親切な作家なので、慣れればそこまで気にならなくなる。
文章の難度を意図的に向上させることで読者を作品に集中させようとするのはイーガン作品に顕著な特徴で、高度なSF的アイデア・科学的アイデアを作品に衒学的に導入し、本当の主題への踏み台にしている節がしばしば見受けられる。
そもそもイーガンは大変に内省的な作家で、多くの場合で物理学は思わせぶりなブラフ。数学や認知科学、神経科学・生化学の方が重要。
イーガン自身、数学や物理学の本質的な議論や論理展開で適当に誤魔化す仕草が見られる。