人間の条件
1958年
公的領域と私的領域、ポリスの領域と家政及び家族の領域、そして共通の世界に関わる営為と生命の維持に関わる営為、これらそれぞれ二つのものの間の決定的な区別は、古代の政治思想が全て自明の公理としていた区別である
アーレントは古代の政治思想を理想とした哲学者
公共性が家庭の排除で成立する
人間はポリスとオイコスを区別するからこそ、アリストテレスが定義したように政治的動物でありうる
近代においては生命の維持の価値があまりにたかくなりその区別が見失われてしまっている
公と私の境界をあらためて引き直し、公的に生きることの重要性を訴えるために書かれた書物
公共性の定義
現れ
公に現れる。すべてのものが、あらゆる人によって見られ聞かれ、可能な限り広く公示されることを意味する。
共通・共同
私たち全てにとって、共通なものとしての世界
世界は人間が作る社会環境
人間が複数いること、この単純な事実こそが、アーレントの政治層を最も深いところで支えている人は素敵な領域では隠れている。そして公共において初めて現れる。それこそが、人間が人間らしく生きることの根幹だが、そこで現れるとは必ず誰かがいる空間の中に現れるということである。一人きりで現れることはできない。
それ故、解放性としての公共性、すなわち表れの空間が機能するためには、まずは現実に多数の多様な人々を受け入れている共通の世界が用意されていなければならない。具体的には、古代ギリシアの都市国家に必ず併設されていた広場を想像すれば良い。
アーレントは、公共性を一方では、開放的な現れの空間として定義し
他方では、持続的な共通の世界として定義
両者はまずは人間の複数性を蝶番にしてつながっている
これらの齟齬
別の論点
人間的な営為
労働
制作
活動
人間的なものは活動だと主張、人は、労働でも政策でもなく、活動を通してのみ公共に接続し、1人の人格として現れることができる
小銭稼ぎのためにコンビニでバイトしたり、自己満足のため、孤独にイラストを描いたりしているだけではダメで、世間に出て、見知らぬ他者とともに共通の社会課題について語り合ったり、政治運動に参加したりするようになって、初めて充実した生を送ることができる
反論
労働が人間的ではなく、価値が低いと言う主張はわからないではない。肉体労働にしろ、サービス業にしろ多くの単純労働は機械に置き換えられる傾向にあるし、それが歓迎されている。けれども、問題は手を動かせ作品制作までも言論や政治参加に対して劣位に位置づけられてしまっていることである。おそらくその序列は、市民と言えば、もっぱら言論を戦わせたり、戦場に出たするばかりで、日常の生活において家具を制作したり、彫刻を掘った料理をしたり、楽器を感じたりは、ほぼ奴隷に任されていた古代ギリシャの社会秩序を反映している。
現代では、クリエイティブ産業の影響力はとても大きい
齟齬
持続性と耐久性がなければ、世界はありえないが、それを世界に保障するのは制作の生産物
開放性としての公共性は、物理的に持続する世界を前提とすると述べた。したがって、この記述は、アーレントが公共性について、先ほど引用した断言とは、裏腹に、決して活動者の言論のみで、支えられるものではないと考えていたことを示唆する人が、人格として、触れ合う現れの 空間が開かれたとしても、それを共通の世界として自立させるためには、どうしても製作者たちのものづくりの助けが必要
活動し、言論する人々は、工作人の最高の能力における助けを必要としている。つまり芸術家、詩人、歴史編戦車、記念碑建設者作家の助けを必要としている。なぜならば、その助力なしには、彼らの営為の生産物、すなわち彼らが演じる物語は、決して生き残ることができない。
政治家や哲学者は確かに公共性を担う。彼らは言葉で他者と触れ合う。しかしその営みはそれだけでは消えてしまう。それが歴史になるためには本が書かれ、記念碑が建てられ物づくりが行わなければならない。本当の公共性や活動と政策が組み合わされなければ実現しない。
アーレントの齟齬
一方では、公共性は活動だけで構成されていると主張しながら、他方では活動だけでは構成されないと主張していた
原因は制作と活動の序列の乱暴さ