空間依存度
#ミニペーパー
2021/02/27
テプラみたいな情報と、実世界に紐付いた情報の呼び名を考えたい。
浮遊した情報/固定された情報…?
一旦例を集めよう。
【実世界に関係ないやつ】、標識みたいなやつ
・地図やカーナビ
・標識全般
・乗換案内
・広告
【実世界に紐付いてるやつ】
・「ドアの鍵が開いてる/閉まってる」をドアの鍵の近くで見ている
・りんごの形…?色は変えられるよな
えー、まず「標識みたいな情報」が存在する。これはスマホで見られるような情報で、どこに提示しても意味が変わらないもの。スマホは現実世界の空間にawareではないので、基本的にはコンテンツをただ表示するだけになる(Ingressとかは現実世界の空間に応じて変わるけど、ダイレクトではないし、ユーザーがどうスマホを構えていようとどうでもいい)。この種の情報には、本に書かれること全般、広告、交通標識などがある。
いや、空間への依存度は二値ではなくグラデーションな気がしてきたな…。
【情報の空間への依存度】
●レベル0:ユニバーサルな情報
それこそ本に書かれる情報。持ち運び可能な物体にハードコードされている情報のうち、物体に依存しないものはすべてここに入る。あと大半のウェブサイト、Wikipediaとか。
↓
●レベル1:位置情報に依存する情報
Googleマップの「現在地」とかは、もしも点がずっと同じ位置だったら移動したとき意味をなさなくなるので、位置情報によって変える必要がある。
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●レベル2:位置と向きに依存する情報
交通標識や信号など。あとは美術館のキャプションとかもそう。おおまかな位置には依存するが、対象に必ずしもへばりついてるわけではない。
↓
●レベル3:物体に依存する情報
食べ物の賞味期限、物理写真など。例示できないくらい多くのものが入る。例えばギターの色、りんごの味、布団の手触りなども入る。
↓
●レベル4?:受け取り手の知覚にも依存する情報
「このりんごの色はこの人には赤に見えるが、この人は色覚異常なので灰色に見える」など。
「この文字は、英語ネイティブのこの人にはtに見えるが日本語ネイティブのこの人には七に見える」みたいなのは、文化に依存した情報だからこれには入らなくて、今回のでは区分けできない別軸。これも考える必要はある…
技術の進歩により、空間への依存度が高い情報をどんどん提示できるようになってきた。
本しかなかったときはレベル0しか表示できなかったけど、スマホの登場でレベル1が(ポケモンGO)、画像認識の進歩でレベル2が(GoogleマップのARナビとか)、空間認識とオブジェクトトラッキングの進歩でレベル3が(ARマーカー使うやつとか)、それぞれ操作できるようになった。
将来的に脳をいじれるようになったらレベル4も操作できるだろう。
ちなみにこれらの進歩は情報提示装置側の入力に依存していて、出力(液晶なのかARグラスなのか、はたまた触覚/嗅覚/味覚なのか)には関係ないことに注意。
で、情報を以前定義したように「形容」として捉えると(オブジェクト指向と形容詞)、それぞれの情報が属性と状態に分けられるんだな。まとまってきた!
2025/07/06
「空間」とひとくちに言っているけど、どの範囲までを1つの「空間」というオブジェクトとして見るのかによって話が変わってくるな。
SpectaclesやHoloLensのいわゆる「MRアプリ」は、今ここから見えている範囲を1つの空間と捉える。一方でIngressやGoogleマップは、地球全体を1つの空間と捉える。
MRアプリの体験はポータブルなので、上記で言っている通りレベル0だが、その空間内では位置や向きに依存する。
さらにTakramでshotaさんがやられていたようなロケット打ち上げのことを考えると、地球中心座標系も太陽中心座標系の中で動いているわけなので、地球全体の座標系が一番上なわけですらない。地球全体座標系も、宇宙基準で見たらローカルでポータブルな概念だろう。
だから、AR的な体験を評価するための「空間依存度」には、少なくとも2つの軸が存在する。
空間スケール:その「空間」のスケール
レベル0:空間が存在しない
レベル1:自分の見える範囲程度のポータブルさ
レベル2:世の中で広く共有されている空間(街全体、地球全体、宇宙全体)
空間精度:その「空間」内で扱われる情報の細やかさ・次元
レベル0:扱わない
レベル0.5:距離のみ(AirTag)
レベル1:いわゆるGPS的な、二次元的な位置(Googleマップ、Ingress)
レベル2:二次元的な位置と向きに依存する情報(交通標識、信号、あとは美術館のキャプションとか)
おおまかな位置には依存するが、対象に必ずしもへばりついてるわけではない
レベル3:三次元的な高精度絶対位置や向きに依存する情報
例えばペットボトルのラベルに「ここからはがす」と書いてある。これはレベル2のようにGPSで実現する類のものではなく、必ずその空間内でのVPSが必要になる。
空間スケールが大きくなるほど、AIP CubeでいうAutonomous性が上がってきて、「ただアプリを見ているだけ」から離れてくる。大きい空間にはユーザーも空間に固定された物体もいっぱいあるだろうから、その空間内で扱われる情報は自然と空間依存度が高くなる。
そして空間精度が上がるほど、複雑な情報提示装置が必要になってくる。