意識タイムライン
#ミニペーパー
物質性/アイデア性とタイムライン vs. トポグラフィを接続するための概念!
まず、メディアの情報構造として「タイムライン的」「トポグラフィ的」という区別が存在する(The Garden and the Stream)。
トポグラフィ的というのはどういうことかというと、時系列ではない「モノとモノとの関係」によって繋がれたページ群という意味。(topography: 地形。何かしらの位置を持っているという意味)
例えばWikipediaは大量のリンクからできたネットワークで、時系列ではなく構造体になっている。
他にも「フォルダ分け」はトポグラフィ的。ファイルを分類して、ある「場所(フォルダ)」に「配置」することで、意味が生まれる。これもまた時系列ではない構造。
一方Twitterやブログはタイムラインベースなので、閲覧するときにこの構造を意識する必要がない。だから上から順番にスルスルと目を通すだけでよい。
しかし「タイムライン的」なメディアでは、昔に起きたことはどんどん忘れ去られていくし、今話題のことしか目に入ってこない。しかも、時系列以外の構造が存在しないので、意見同士の関係を捉えることが難しく、何かを体系的に知ることには向いていない。
一方Wikipediaや昔の個人サイトはそうではなく、場所に紐づいて連関しているので、じっくりと時間をかけて知識群の総体を育てていくことができる。ただ自分で掘りながら読んでいく必要があるから、認知負荷は高くなる。
The Garden and the Streamでは、最近のメディアはタイムライン的すぎるから、自分の知識群を育てる場所である「デジタルガーデン(位置に基づいているから空間的なメタファを使っている)」を作るべきと主張されている。
ところで、なぜタイムライン的なものの認知負荷が低いのかと考えてみると、それは人間の意識の仕組みにあると思っている。
人間の意識は、それ自体が一つのタイムラインになっていると思う。一度に一つのことしか考えられない。自分が考えたこと、意識していることを何らかの情報構造で表現しようと思ったら、タイムラインになるだろう。これを「意識タイムライン」と呼んでいる。
トポグラフィ的なものを眺めるときでも、それを眺める人の脳内に起きる認知プロセスはシングルスレッドのタイムライン。つまり複雑なものを理解するときには一度タイムラインにほどいて、もう一度頭の中で編みなおす必要がある。
ここで、意識タイムラインは脳内で起こることすべてではないことに注意が必要!
例えば記憶はもっと複雑な連関を表現できているはずだし、何かを理解する(=メンタルモデルを獲得する)際もトポグラフィ的なものを総体として獲得しているはず。
脳内には「意識」と、それが作業する作業台があると思う。意識が記憶を呼び起こしてきたり、脳内イメージ領域に絵を描いたりすることによって、我々は複雑なものを理解できているような気がする。
でもその主体となる「意識」の活動はシングルスレッドのタイムラインになっていると思う。記憶を「たどる」とき、そのたどっている主体の行動履歴が意識タイムライン
意識タイムラインの特徴
「位置」を持たず、順番のみがある
一度に一つしか見られない
昔のものから順番に忘れて、意識できなくなっていく
自分は、タイムライン的 vs. トポグラフィ的という区別は、メディアだけでなくソフトウェアデザイン全般に存在すると思っている。
知的作業をサポートするUIを作るとき、意識タイムラインの形成や管理自体をサポートするのか、トポグラフィをビジュアライズして眺めやすくすることをサポートするのかの二軸が存在する。
iOSのアプリスイッチャーは、意識タイムラインに仕組みが近いためそれ自体が「意識」の延長のように感じる。
一方デスクトップメタファは、意識タイムラインから遠く、位置や大きさを持ったトポグラフィ的な配置になっているため、意識的に管理してやる必要がある。
Twitterのタイムラインは意識タイムラインに非常に近い。
ArcのタブはChromeのタブより意識タイムラインに近い。
Scrapboxは、書き込む時点では意識タイムラインに近い(「場所」がなく、何かを参照しながら書いていける)が、それを俯瞰して見ると全体としてトポグラフィになっている。これは意識タイムラインが考えたことが「記憶」として定着することに似ている。
Notionには「場所」があるため、書き込む前にその思考がトポグラフィのどこに位置するかを考える必要がある。
意識タイムラインに近いほど、書く側も読む側も認知負荷が低い(たぶん)。意識タイムラインから遠いと、何かの関係性を正しく表現することが可能になる。
Twitterは意識タイムラインに近すぎるので、The Garden and the Stream的には困ったことになる。すぐに忘れていってしまう。「意識タイムライン」が刺激され、「記憶」にすることを促さない。だからWikiにしましょうということになる。
一方Slackはトポグラフィ的(各会話スレッドがワークスペースという位置を持っている。昔のものも残り続ける)なので意識タイムラインから遠く、使うときにそれをタイムラインに再編成する必要が出てくる。これは解決すべきフリクションとなる。
AIは自動でトポグラフィをタイムラインに変換してくれる。「会話」は完全に意識タイムラインと合致した構造になっている。それがDevinだし、Claude Codeは会話のタイムラインから構造を作り直してくれる。
手続き的 vs. 宣言的は少し複雑
最終的には、複雑な関係を持ったトポグラフィとしてのソフトウェアを作ろうとしている
それを「コンピュータの視点に立ったときの意識タイムライン」側から記述するか、「トポグラフィをそのまま表現した構造」として記述するかの違いが手続き的 vs. 宣言的
Claudeに近い概念を出させた
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あなたが定義されている「意識タイムライン」に非常に近い概念が複数見つかりました。以下、主要なものをご紹介します:
1. Stream of Consciousness(意識の流れ)
最も近い概念は、ウィリアム・ジェームズが1890年に提唱した「意識の流れ(stream of consciousness)」です。研究により、人間は一度に一つの精神的出来事しか経験できず、高速で流れる心の流れとして存在することが示されています。
ジェームズは「意識はバラバラに切り刻まれたものとしては現れない。『鎖』や『列車』という言葉は、意識が最初に現れる様子を適切に表現していない。それは繋がったものではなく、流れるものである。『川』や『流れ』が最も自然な比喩である」と述べています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%84%8F%E8%AD%98%E3%81%AE%E6%B5%81%E3%82%8C
英語版のほうが詳しい→ Stream of consciousness (psychology) - Wikipedia
近い概念があったのは嬉しい。でも意識タイムラインという言葉は、タイムラインとトポグラフィをパラレルで見る際に重要だからそのままでいいと思う。
2. Serial Processing(シリアル処理)
認知心理学における「シリアル処理」という概念も非常に関連しています。シリアル記憶処理とは、一度に一つの項目に注意を向けて処理する行為で、通常はパラレル記憶処理(すべての項目を同時に処理)と対比されます。
認知処理における「心理的不応期(psychological refractory period)」の研究では、人間は典型的には二つのタスクを同時に実行できず、周辺的な知覚と運動段階は並列で動作し続けるものの、中心的な決定段階が直列的なボトルネックを課していることが示されています。
ACT-R
3. Global Workspace Theory(グローバルワークスペース理論)
グローバルワークスペース理論では、意識に入る情報は「グローバルワークスペース」に一時的に保持され、そこから脳全体に「ブロードキャスト」されます。この理論は、意識が一つの統一された状態として現れ、分化されながらも統合されていることを説明します。
この理論によれば、意識的処理は統合とブロードキャストの結果であり、情報容量が限られた認知アーキテクチャです。そのため、意識的経験は単一で、統一的で、逐次的であり、任意の瞬間には少数の項目しか保持できません。
Global workspace theory - Wikipedia
意識のことを劇場のスポットライトというメタファで説明している。
統合情報理論(IIT)に関係あるらしい