『君主論』と深津さん(@fladdict)の話
深津さんのおすすめ本『君主論』
ビジネス、デザイン、エンジニアリングへの応用、特にスタートアップの戦略を念頭におすすめしてたようでした。
マネジメント、リーダーシップへの応用を書いた文章は既にいくらでもあるし、むしろそれに関しては基本過ぎて古くなってる感じもある。(リーダーシップに関しては、「リーダーシップ3.0」とか「サーバントリーダーシップ」の話を考えると君主論で紹介されるようなものは(それが有効な時代があったにせよ)今は微妙な気がする。たぶん。)
今回はなるべく君主=企業、国民=顧客のイメージで解釈して有用な知見が得られないかなと思い読んでみた。
本の抜粋とその解釈
「文化の違う統治領域には、王が住むか植民兵をおくべき」
深津さんがデザインするプロダクトをまるで住みこむようにユーザーとして使い込むことと近い?
変化をユーザーとして体感しておかないと対応速度が落ちる
もちろんユーザーの気持ちがわかることがデザイン上重要であるということで間違いないが
3章の「他者が強大になる原因を作ったものはみずからを亡ぼす」
ビジネス基本原則っぽい
とはいえ「市場を広げるために特許公開」やOSSに、とかある気がするので一概に言えなさそう
他者を強大にすることで市場(パイ)全体を広げることができる
ヨーロッパの国家間の戦争は基本陣取りのゼロサムゲームなので、その前提で書かれている部分がある
スタートアップが狙うようなブルーオーシャンはゼロサムゲームではないので注意
「新制度の導入者は旧制度の恩恵に浴していたすべての人々を敵にまわさねばならから、そして新制度によって恩恵を受けるはずのすべての人々は生ぬるい味方に過ぎないから」
「ひとつには旧来の方を握っている対立者たちへの恐怖心のためであり、いまひとつには確かな形をとって経験が目の前に姿を見せないかぎり、新しい自体を真実のものとは信じられない」
これは流石に顧客向けの戦略だけで無くマネジメントの面でも応用ができそう
顧客に関しても新しいものを導入する人々は同様の負担や反発を強いられる(BtoBなどでは特に)
旧いものをいかに処理するか、その処理をいかに助けるかが重要
社内の意思決定という観点だと、新製品、あるいは新企画を導入させるためには、社内の既存権力の説得が必要になる場面がある
そういう意味では他社=クライアント企業、にせよ自社=改革対象にせよ君主論のやりかたで使える部分はある
「軍備ある預言者はみな勝利したが、軍備なき預言者は滅びてきた」
「人民は本性において変わりやすいので、彼らに一つのことを説得するのは容易だが、彼らを説得した状態に留めておくのは困難であるから」
広く広告やブランディングなどのコミュニケーションの分野での基本かなと思いました
人の心をキープするための努力は、近くの人でも大変なのに、顔も見えにくいお客さんならなおさらだと
君主の座を獲得するのに苦労を伴えば、保持する労力は少ない
実力で既存体制を完全に破壊し、全く新しい体制を作り上げる努力をしたものがつよい
市場を作ったりする面での先行優位の話なのかなと思いました
「新しく君主になった者たちは、自分の政体の発足当初に諜し合わせた人たちよりも、その発足時に疑念を抱いていた人たちの方に、はるかに大きな信頼と大きな利益とを見出してきた」
新しい君主の登場に反抗するものほど味方につけやすい
既存の状況に強く賛同するような性質を持つような人々だからこそ、新しい状況にも強く適応するということ
現状への不満のみをモチベーションに新しいものに飛びつくものは、すぐに新しいものに対しても不満を見出す
キャズム理論の話にもつながる内容
アーリーアダプターは新商品を受け入れるのは早いが離れるのも早い
レイトマジョリティに受け入れさせるには努力がいるが、持続的な顧客になってくれるかもしれない?
これも前述の通り、他社や社内の意思決定に関しての応用はできそう
「加害行為はまとめて一度になされねばならない。けれども恩恵のほうは少しずつ施すことによって、なるべくゆっくりと味わうようにしなければならない。」
ユーザーに一時的に被害を与えてしまうような施策に関していつそれをすべきか、一方ベネフィットのあるものについてはどうすべきかなどに関して考える手がかりになりそう
「自己の軍備を持たなければ、いかなる君主政体も安泰ではない。それどころか、逆境のさいに自信をもってこれを防衛する力量を持たない以上、全ては運命に委ねることになってしまう」
センターオブエクセレンスなどの話と組み合わせると、どの強みを自社で握って離さないかの判断はとても大事ということになる
全てを自分で握るというのは、プラットフォームの力などを考えるとおかしいかもしれないし、どこを投げてどこを自前で保つかは重要
「君主たる者は、したがって、戦争と軍制と軍事訓練のほかには何の目的も何の考えも抱いてはならない」
これも納得感がある。
マキャベリは国家の競争力の源泉は最終的には軍事力にあると考えていて、当時の時代背景ではそれは正しかったのではないかと思う
中立の危険性と、付和雷同の危険性
2者の争いに対してどちらにもつかない中立は結局の所どちらからも信頼を得られない結果となる(政治的人間関係的側面では)
勝つ方に付けば恩義は得られる
負ける方につけば、また蘇ったときにはそれを分かち合える
強力なものと同盟し、弱い第三者を攻撃する形は避けるべき
従属状態に近づく 独立が保ちにくくなる
ビジネスにおける提携などでも同様のパターンなのか?(まだ働いてないんでわかりません)