都市36景 空中都市「ナナイロシティ」
ほうき星町シリーズ外伝 近未来篇「蒼の世紀」の舞台
https://gyazo.com/af0991aed5b28bfeaac17175afb42a52
いくつかの陸地が、上空に浮かんでいる。
はるか彼方の下の蒼は、すべて海。空中都市の人間は、「下の海」と呼ぶ。
そして青空を、「上の海」と呼ぶ。
空は、航海するためのもの。
https://gyazo.com/2e7ece4a63a81f307519b2e0204afe94
うっすら緑の流体がかかっているのは、「エーテルフィールド」と呼ばれる、落下防止のための安全装置(ガードレール)。まるで網のように、「上の海(空)」から、「下の海(潮っからい方)」へ落ちようとするひとを、救う。誰もが一度はお世話になる。どれだけ自分の翼に自信があっても。
https://gyazo.com/14d2acf8e031f79b5b3ad96ac8547ede
現代、近未来篇「蒼の世紀」序文
蒼空は、ゲーム盤と、海に、挟まれている。
だから、生きる価値がある。
ーーー
むかしむかしの御伽噺。
レッズ・エララの極東にて、鬱病のやさしい仙人と、ナチュラルハイの【大陸神】が、
互いの信念をかけて、戦いました。
結果は、誰もの予想を覆し、
まったき正義の【大陸神】が敗れ、
仙人・剣崎月読は、「神討ち」となり、鬱病にナントカ、ケリをつけました。
ーーー大陸をひとつ、この世から灰塵させて。
「下の海」。
空中都市群・ナナイロシティ圏域の遥か下方に広がるその青は、在りし日の骸。
空中都市、及び都市間のルートは、エーテルフィールドに包まれている。
いわばガードレールだ。
そのガードレールの「ルール」を定めるのは何か?
ナナイロシティ圏域上空には、大陸が「下の海」になるずっと昔から、上下反転した透明のゲーム盤がある。
それはもう一つの骸。
古代文明の遺跡というのが通説だが、真実はレッズ・エララのさらに前、「先史時代」にまで遡る。
隔離された神々のチェス。
三種族のゲーム(殺し合い)が終わっても、そのゲームルールだけはずっとそこに存在していた。
ゲームルールと盤があるなら。
そう。
ゲームは続くのだ。
かくして「ひと」が、
灰塵と化した大陸から、空を目指し、空中都市を建設する。
と同時に、「ゲーム盤」よりエーテルフィールドが放たれ、
やがて建設されし各空中都市は「連結」された。
エーテルフィールドは全てを救う。
負けて落ちた飛行船も、勝って堕ちた空の勇者も。
エーテルフィールドは全てを救う。
だからかつてのロストテクノロジーだって落ちてくる。
(そのゲーム盤が、先史時代の神が南方に築いた「クロラロラ大陸そのもの」 である、と知られるのは、
もちろんずーっと後のことである)
ゲーム盤と、下の青い海。
ルールは定まった。下にはもう居られない。
ナナイロシティ圏域は……空中世界は、誇り高き「希望」を求めている。
「さぁ!今年も始まった、ナナイロシティ・エアレース・グランプリ!
勝利条件はたったの二つ、
ルールの中で最強たれ!
ルールを超えて最速たれ!
世紀はもはや新時代!
駆け抜けろ! 駆け抜けろ!
その翼でもって!」
「4年連続チャンピオン、「神討ち」こと、「天使」!
彼女の背には、一枚の天翼、一枚の邪翼、そして一枚の機械スタビライザ。
誰より速く、誰より気高く。
5年目の栄冠は彼女なのか? 誰かアイツを止めてくれ!」
「そして今年も……去年に引き続き、勝ち登ってきたのは、あの2人だ!
操縦士・「魔女」、「竜胆ミズ」!
メカニック、「ペコ」!
飛空艇「エルルケーニヒ・改々」を駆って、今年のレースをゴボウ抜き!
去年の「天使」との敗北から、雪辱のリベンジなるか!?」
わたしたちが青に染まっていたころ。空の蒼を、駆けていたころーー
レッズ・エララ神話体系 近未来篇 「ほうき星町」シリーズ外伝
「蒼の世紀」
(序文)