都市36景 水没都市「レヴァス・ファンジェ」
現代/近未来篇「ほうき星町」シリーズ時間軸
水没都市レヴァス・ファンジェについて
むかしむかし、レッズ・エララの辺境のことでした。
海原で、ある夜の、時化(シケ)
「クソったれ!荒れすぎだ、しかも凍える寒すぎる!冷たい!」
「北の海がこれほどまでに時化るとは!」
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ほとんど難破寸前の小舟である。
クルー「船長!舵がもう折れます!」
船長「なんだっていい!近くの陸地につけろ!海獣に呑まれるよりゃマシだ!」
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船長「……こんだけ水属性の魔力がエーテル流動してるんだ。オーロラみてぇに視認出来るレベルってどういうことだよ……ま、それも仕方がねぇ」
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船長「あのクソったれな、禍々しい吸血鬼じみた紅い月……はぴぱぴハッピーなことなんか、あるワケがネェよ」
死を覚悟している船長であった。だが、クルーの命はまた別だ。あいつらの命だけは、最低限、なんとしてでも。確率を、確率を……
そのもがきが天に通じたか、
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クルー「船長! 陸が!」
船長「ありがてぇ……野郎ども!とにかく上陸だ!」
……その島の岸には、接地出来る砂地も岸壁も見えないことに、船員は気づいていなかった。だがそれを誰が責められようか。正論で命が助かる場合ではなかった。陸地的なものがあれば、まずは人間は助かる。全てはこの荒れ狂う海から逃れるのが第一だ。
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エーテル度数75000。(通常の人が住む都市で250)
それが、その日、大時化となった北方の海での水属性魔力の暴走であり、
紅い紅い三日月が、したたるように笑っていた夜だった。
後に、「レヴァス・ファンジェ」と呼ばれる都市……水と共に生き、水に呑まれ、その呑まれっぷりを「観光」として活かそうとするしたたかな街……そんな街が生まれることになる、「やたらと時化に近い土地」が、人類史上、この時初めて観測されたのでありました。
そこには、何かしらの狂気が含まれている。
紅い月が、輝いているように。