「手紙」#3
「おれだよ、おれ。わかるよな、おれ」
エヴィル「さて、俺様がアカシックレコードからちょっぱってきたこの【異次元からの手紙】なんだが、こんなお前オレオレ詐欺かっていう冒頭だ」
時雨「ひどい」
落葉「老化は白髪だけにしとくのじゃ」
エ「後でお前の金襴繚乱のオベベ売り飛ばす。それはともかく、この手紙の書き手の名前は、わからん」
時「えっ?このレッズ・エララ世界の、すごい人なんじゃないの?」
エ「どうも、この手紙を書いた世界……異次元だわな。そこの【ある世界】では、名前がなくなる、らしい。その余波で、こいつの名前がすごく認識しづらくなってる」
落「ふっつうに意味わからん」
エ「俺様もそう思う。だが、一応、こういう理屈が通ってるらしいんだ……
異次元は、複数の世界が並列して存在している
その中のあるひとつの世界では「名前」と「存在」の関係が、逆になるという
名前と存在が逆、とは……例えば、俺様たちの肉体。顔、手、足。これが、全部「顔(かお、face、等)」「手(て、hand、等)」、という「名前」だけになる。名前、とは言葉だが、つまりこの世界は「言葉」だけの世界なんだな。
……んで、ここが一番のロジカルジャンプポインツなんだが……
その世界でパワーを稼ぐには、言葉の強度と量がごっつければ良い。
世界で何か事を為そうとするには、有形無形のパワーは要るわな。そういう意味あいだ。
とにかく、言葉はその世界においてはパワーなんだわ。
そこで、この手紙の作者は「自分を構成する名前(言葉)を全て【否定系】にして、爆発的なパワーを得た」
……ということなんだが。さて、質問タイムだ」
時雨「はい先生」
エ「おっと時雨君はやかった」
時「まず、この人はパワーを得たんだよね」
エ「間違いないな」
時「そして、名前を失った。おそらく、他の肉体も失った……?」
エ「自分のパーツを全部失ったのだから、そう考えるのが、まず自然ではあるが、予断は許さない」
時「じゃあ質問するけど、このひと、自分を失ってパワーを得て、どうなったの? 何をしたかったの?という疑問もあるけど、とりあえずそれの回答は2番目以降でいいや。とにかく、この言語世界で【どうなったのこの人】? 死んだの? 生きてるの? 結局何かを為せたの?」
エ「そう思うよなーーーーーーーーーー。(ド納得)じゃ、回答タイムだ。まず、時雨君は2番目でいいって言ったが、こいつの【欲望=何をしたかったか】のとこをまず補助線で引こうか。ええと、これ言うのすっげぇガクっとくるんだが……」
落葉「ひどい嫌な予感がするぞぇ」
エ「まず、こいつがこの言語世界の前に居たのが、性欲発散を禁忌とする世界で……」
時&落「「あっ予想以上のヒドさ」」
エ「長らくエロスバーストが出来なかったという。それはともかく、エロが溜まったこいつは【次の世界ではちょっと良い思いをしてもいいんじゃないか】って思ったんだな。まぁ体感時間にして6500年一滴もエロスバーストが出来なかったんだからしょうがないが……」
時「その話もすっごーーい聞きたいけど、話が逸れてきてるから本筋お願いっ」
エ「マジすまん…………。この手紙、こういう本筋逸れなのか本筋なのかがあやふやになってく手紙でな……内容的に。話を戻すと……
つまりこういうことだ。こいつは「ちょっと良い思い」ということで、この言語世界で英雄になれば、ちょこっとはハーレムうはうはになれるんじゃないか、っていう考えをしたのだ。折しもこの世界は、言葉と言葉が、整合性と正論性のために、常に争ってるような状態だ。安らぎとか平和っていうのがない。だから、こいつはこの戦争をなくして、英雄になろうとした。で、結局、己の言語を【否定系】にする、っていうのが、この世界にとってはものっ凄いテロリズム的発想で、所業なわけだ。でも、この手紙の作者は、それでもって言語世界の戦乱をすべて統一した!
時雨「おおーー!英雄だ!」
エヴィル「そしてそいつは一晩だけ良い思いをして、次の世界に行ったとさ」
落葉「なんじゃ、結局エロか」
エ「……そう思うだろ、ところがこれ、あっさり書いてるが、とんでもないことをしててな」
落葉「わくわく」
手紙の作者は、この世界で思いを寄せてた少女たちと、良い思いをしようとした。少女は、言語の粋を集めた超エロいことをしようとして……手紙の作者が体感時間6500年ぶりにカウパーを漏らした。そしたら世界の法則が変わった。言語世界から、肉体世界に変わったのだ。
時雨&落葉「ほへっ?」
エヴィル「その世界の言語統一王による、圧倒的な言語破壊とネゴシエーションと叙事詩の末だからな……。世界が【言語はもういい!肉体だっ!】っていう風に舵をきったらしい。そしたら、言語世界の文系の繊細な少女たちが、一瞬にして【転換】したらしい」
時雨「あっ、その後の展開読めた」
エ「なんと実に健康的な褐色肌のビキニギャル娘たちに……」
落葉「のう、エヴィル」
エ「なんだい落葉」
落「この話、 与 太 ではないかっっっっっ!!!!」
エ「俺様もそう思う!だがな!冷静に考えろ!こいつ、世界の法則、因果律をサラっと全部書き換えてるんだぞ!」
落「知らんわ!どうせこの手紙作者、性的趣味が世界ごと変わったから、ギャルたちといっちょスカっと爽快して、もうええわどっとはらいっ!と次の世界いったんじゃろう!」
エ「それだけだったらよかったんだよなぁ……実はこれまでの少女を敬慕する筆致が、6500年の禁欲生活で、非常に古典少女趣味的な静謐だったんだが、一気に肉体ギャル化したもんで、筆者もう「アアアーッ!アアアーッ!」とむしろ発狂しそうで、もうどーだっていいやーーー、と一発涙とともに発散して……」
時「ひどい与太」
エ「ひどいよな。で、こういうのが初心者向けなのが異次元なんだが……」
落「おなかいっぱいじゃ」
エ「だよなぁ……」
エヴィル「というわけで、異次元行こうと思うんだが」
時&落「ええーーーーーーー……………………」