「手紙」#1
「助けてくれ。しにそうだ」
から、その手紙は始まる。異次元からレッズ・エララに向けて届いた、その手紙は。
少なくともレッズ・エララの世界において、彼の知識と発想を越す頭脳の「ひと」は居ない。
生まれてから時折、彼はこんな疑問を抱いていた。
「この世界の【外側】があるのではないか?」と。
それは、異次元の存在。
レッズ・エララの中世において、その発想は禁忌とかいう以前に、狂人のうつろな妄想としてしか語られない。
なにしろ、「先史時代」という概念すら、エヴィルのような第一級の知性がようやく認識しはじめた頃なのだ。
だが、エヴィルは子供のころから、「外側/異次元」という概念が、非常に「しっくりきた」のである。
レッズ・エララの世界の現象は、あまりに巨大で広大で極端な振れ幅を持ってはいる。しかし、それは「ある基準を、極端に拡大したもの」という風にしか、エヴィルには見られなかった。
その「ある基準」とは、先史時代のことである。
つまり、2018年の今、のことだ。
なるほど、先史時代の復興(ルネサンス)を、レッズ・エララの一部の神は、もくろんでいる。
このREにおいて、先史時代をより強く、輝かしく、幻想的に仕立て上げることを。
「……つまらねぇ……!」
天才エヴィルが、そう思うのも、無理はない。
それでは、引き写しではないか。リミックスという風に表現?ハッ、すればいい臆病者。そこに「新しさ」など何もないではないか。慰撫の揺りかご。再現性のたゆたい。
彼の特殊技能は、「ちょっと頑張ればアカシックレコードを閲覧することが出来る」というものだ。
だから、彼はしょっちゅう図書館行く感覚でアカシックレコードに行っていた。貸出カードは20冊までの制限である。図書予約は3日待つ。返却期間は2週間。
そこで、エヴィルは、見つけてしまったのだ。
ちょうど、時雨と一緒に神を殺し、妖刀「落葉」に宿る妖精が、娘となったころに。
「助けてくれ、しにそうだ」
から始まる、異次元からの手紙を……。