ピアリング戦記
メモ
ピアリングとは
ネットワークとネットワークをどう繋ぐか、その形態。
自分の接続しているISPとwebサイトがホストされてるネットワークは別のことが多い。
それらネットワークと自分のネットワークの間をどう効率的繋ぐか、ここがピアリングの話。
ISPとは
BGPとは
インターネットの設計
パケットをnext hopにひたすら転送し続けるルーターで実現されている ルーターはルーティングテーブルはどう手に入れるか?
静的に手動で全ての経路を記載したテーブルをルーターに作るのは非現実的なので動的に生成されるべき
ルーティングプロトコルは2つに分けられる
IGP(Interior Gateway Protocol)
ネットワーク内の動的ルーティングのための仕組み
EGP(Exterior Gateway Protocol)
ネットワーク外のネットワークとネットワークの経路関係を取り持つ動的ルーティングのための仕組み
これはインターネットにつながる全てのネットワークで同じものを使う
ここで使われるのがBGP
AS(Autonomous System)
BGPによるルーティングでつながっている個々のネットワークのこと
ASはISP/コンテンツ事業者/学術機関/データセンターなど各種事業者が運営してる
自律分散したASが自由にBGPを使い相互接続し合うことで複数のネットワークがつながった巨大なインターネットが出来ている
AS = 組織/企業、つまりどのASとどう繋ぐのかはビジネスや政治といった人間的な力学で決まる。
EGPはASを運営する組織の力関係や金銭力でルーティングが決まる
これを「ポリシー」と呼ぶ
ここがおもしろポイントっぽい
トランジット
力(トラフィック量)の少ない組織Bが力(トラフィック量)の多い組織Aに対価を支払ってパケットを融通してもらう方式のこと
組織Aと組織BがASを繋ぐ時に、組織Bが組織Aに対してお金を支払うのはなぜ?
トラフィックをたくさん発生させる方が偉い
トラフィックを融通してもらえる分組織Bはお金(従量課金など)を払うことでイーブンな関係になっている
組織の大きさでTier1 > Tier2 > Tier3と呼ばれる
CDNやISPはTier1
下位にトラフィックを流すと儲かる = 力のある組織は下位の組織にトラフィックを流すモチベーションがある
ピアリング
Tier1同士など対等なトラフィック量のAS同士が接続すること
ピアリングするモチベーションがトランジットほど無いので最低限の到達性しか提供しないのが一般的
最低限の到達性のよくあるルール
1) 自分よりも下位にいるASに対するトラフィックは転送する
2) 一度トランジットを経由しないと到達できないようなネットワークへのパケットは転送されない
3) ピアリングからピアリングをまたぐような場合もパケットは転送されない
ASがトランジットではなくピアリングを選ぶモチベーションは?
下位ASはピアリングの方が金がかからなくて良い
上位ASはピアリング先が増えると通信性能の向上が見込めたり障害対応時の融通が効いたりスケールしやすくなって良い
別々のASをピア接続するには
互いのASのBGPルータ同士を同じL2セグメント(ルータを越えずにパケットを送る範囲物理的に同じ場所)に配置する必要がある
データセンターの価値
入居しているASの事業者の豊富さで決まる
東日本大震災を契機に事業継続計画(BCP)の観点から大阪のデータセンターも選ぶ事業者が増えた
東京のピアリング拠点は利用者も回線も多く圧倒的に価格が安い。距離的なメリットより東京を選ぶことの方が多かった。最近はトントンになりつつある
Equinix OS1
2019年頃までNTTテレパーク堂島の4つのビルで物理的な距離は近いにも関わらずビジネス上の制約などで相互接続ができなかった問題
ASを持つ組織がBGPルータを持ち寄って接続する場所
IXのスイッチにBGPルータを設置するだけではピアはつなげない。BGPルータが互いにピアを張らないといけない。IXは婚活パーティみたいな感じ。
ロシアではIX(MSK-IX)がロシア全体をインターネットから切り離せるようになってる(合法的傍受)。おそロシア。
ウクライナ侵攻で2022年イギリスのLINXがロシアへの接続を切った事例も。
日本最初のIX
米国の IX に繋ぐ形が中心でした。つまり、日本国内の ISP 同士が米国を経由して接続 しているという状況にありました。それに加えて、当時の日本の事業者がインターネッ トトラフィックの大部分を占めていた米国の事業者と接続するには、トランジットを 購入する必要がありました。そのような状況のなか、WIDE が 1994 年に神保町にあ る岩波書店のビルの一角で始めたのが、日本で最初の IX である NSPIXP です。さらに 1996 年には NSPIXP-2 が大手町で開始しています。
神保町の岩波書店のビル!!!
1990年代はまだ4組織くらいしかないしビジネスではなく学術的で実験的な意味合いも強くて政治臭があまりしない。
KDD(KDDIの前身)では国内にIXが全然なくてアメリカからトランジットで契約してた。海底ケーブルの利用料も含めてコストが莫大。交渉しても話を聞いてくれない。
JPIX(日本最初の商用IX)の必要性の高まり。
中国も強腰で交渉にならないの大変そう。。。
そうした事象を考えると、インターネットの将来っていうのは、案外と厳しいような 気もしますね。インターネットっていうのは、フェアで公平でフラットなネットワー クだと言われていますが、かつての米国の Tier 1 プロバイダしかり、やはり強者の論 理というか、強いものには勝てなくてどんどん寡占化していくという傾向にあります。 強いネットワークにみんながお金を払って接続し、ますます強いものだけが残るとい う印象が強烈にあります。
KDDに先を越された形で危機感を覚えてNTTやIIJもIX事業に立て続けに参入。90年代後半くらい。
これが後のJPNAPへ
2003年、比較的後発のBBIX(ソフトバンク系列。Yahoo!BBを主軸にしたIX)
既存のISPなどは乗り換えて接続まではしてくれない
RPX
国際ローミングはインターネットでいうところのTier1同士のピアリングしかなく、携帯事業者はそこからトランジットを購入して相互接続するしかなかった。日本と韓国の通信なのにアムステルダムを経由しちゃっててRTTが1000msみたいなくそ遅になることも。厳しい...
RPXは国際ローミングでもIXのような場所を用意して各社がそこに接続できるようにするための仕組み
これにより例えば日本と台湾がピアリングできるようになり100Mbpsとか出るようになった。
接続帯域を合わせると今ではアジアのNo1 IX事業者に。
日本の大企業的なコミュニケーションヘビーな体質(大量のメールのやりとりや綿密に覚書を交わすなど)により海外事業者が日本国内のIXへ接続するのを躊躇う2012年。ほんの10年前だけどめちゃくちゃ日本っぽい...
peering-in-japanもだけど、2000年中頃から2010年前半くらいまでにいろいろなインターネットの技術のコミュニティが立ち上がっているなぁ。
米国はDIY的に立ち上がったIXがあったりヨーロッパではNPOが非営利に立ち上げたIXがあった。日本ではそういうのは初期からISPや大手キャリアが参入してたので育ちにくかった。地域さというかお国柄みたいなものを感じる。
ピアリング相手、出会い方色々。婚活っぽい。
PeeringDBで探す(=結婚相談所)
IXが運用するルートサーバに繋ぐ(=マッチングアプリに登録する)
人と人がコミュニケーションする(=友人、知人からの紹介)
GPF(Global Peering Forum)、良すぎる...
初期のGPFは まさに仲良くなるため、ソーシャライズするためのイベントとしていろいろな企画が ありました。たとえば、「みんなでお揃いのコスチュームで参加しよう」みたいなこ とをやるんです。「70 年代ディスコ風」というテーマの回があったのですが、強制で はないので日本から行く自分たちが欧米の 70 年代ファッションをしてもつまらない だろうと、あえて忍者の格好で参加したことがありました。忍者風の衣装のパーティ グッズを買っていって、それを着て参加したんです。そのおかげで、「Japan から来た Toyama という奴がいる」というふうに覚えてもらえました。
ハイパージャイアンツ
Googleなどのコンテンツ事業者やCDN事業者
2007年は通信事業者がトラフィックの上位、2009年あたりからGoogleなどのコンテンツ事業者が上位を占めるように。
今ではハイパージャイアンツがTier1を超えて多くのASと接続するように。
CloudIX研究会
AS番号で自己紹介して番号で呼び合う謎の空間
小並感想
ピアリングではどうしても物理的に接続する必要があるため場所の問題やビジネス上の問題などが障壁になりやすい。インターネットが物理的に繋がってる様が浮かび上がってくるように感じる。