『贈与論 ―資本主義を突き抜けるための哲学―』
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贈与は一貫してフランス思想の通奏低音であった。カトリックの恩寵からデリダの脱構築まで、 この国の人々の創造的思考の底には、常に贈与の主題が低く深く鳴り響いているのである。
それほどに重大なこの概念が、本書によって初めて、あらゆる角度からの全面的な照明を加えられた。
現代フランス思想を読み解く鍵は実に贈与の中にある。平易な語り口によってすべての人に開かれた、
これは思想の贈り物である。―― 中沢新一
「もの」を交換し社会を営んできた人間。狩猟採集から農耕への移り変わりとともに「貨幣」を生み出し、
資本主義というシステムを作り上げた。等価交換から生まれたシステムは、いまや行き詰まりをみせ、
新たな段階を模索している。例えば、ボランティア、臓器移植、ベーシック・インカム、自然エネルギー……。
行為や思想の根底に、交換ではなく見返りを求めない「ただ与える」という贈与の精神が存在していると思われる。
贈与の思想は、人間社会に多くの慣習や交易を生み出してきた。
一方、アイヌの熊祭りのような神話的思考、チンパンジーの毛づくろいにみられる動物世界の習慣は、
人間と動物のあいだ、動物と動物のあいだにも贈与の思
想が存在していることを教えてくれる。
人間はけっして経済的動物ではない。
人間、動物、自然をふくめた世界を互酬的ではない贈与の視点から捉え直すとき、
交換や資本の論理にからめとられた世界から解放されるだろう。
「ただ与える」の思想が、これまでにない関係性の未来を提示してくれる。
【目次】
序章 贈与のアクチュアリティ
贈与の慣習/無意識のうちに僕らを縛る贈与/贈与への期待
第1章 贈与にはお返しを!―マルセル・モース(I)
モースの研究/ハウ/ポトラッチ
第2章 理想と危険―マルセル・モース(II)
経済的動物/平和/社会保障/贈与の危険性
第3章 ワインとインセスト―クロード・レヴィ=ストロース(I)
ワインの贈与/インセスト・タブー/最高の贈り物としての女性
第4章 クリスマスとハロウィン―クロード・レヴィ=ストロース(II)
サンタクロースの処刑/クリスマスとハロウィン/異界との交流
第5章 贈与のスカトロジー―ジョルジュ・バタイユ(I)
糞尿文学/異質学/消費/贈与とウンコ
第6章 太陽による贈与―ジョルジュ・バタイユ(II)
太陽による贈与/過剰エネルギーの行方/第三次世界大戦の危機とマーシャル・プラン/自己意識と贈与の世界観
第7章 愛の狂気―シモーヌ・ヴェイユ
バタイユとヴェイユ『/人間の条件』/愛の狂気/捨てること/純粋な自己贈与
第8章 贈与は贈与でない!?―ジャック・デリダ(I)
写真と現前/脱構築/贈与は贈与でない!?/時間を与える
第9章 死の贈与―ジャック・デリダ(II)
死の贈与/イサクの奉献/オノノカセル秘儀/沈黙の言語/犠牲のエコノミー/あれかこれか/われら犯罪者……
第10章 贈与を哲学すると―?ジャン=リュック・マリオン(I)
ハイデッガーの衝撃/現象学と還元「/還元と同じくらい、与えがある」/受与者
第11章 贈与としての愛―ジャン=リュック・マリオン(II)
愛と哲学/確実さを疑うこと/エロス的還元〈/求める愛〉の限界〈/与える愛〉/神への愛と神の愛/愛と憎しみ
終章 結論にかえて
人間中心主義/互酬性/動物から人間への贈与/動物のあいだの贈与/返礼なき贈与/贈与の未来
補章 『借りの哲学』補完計画
はじめに/純粋贈与と贈与の出来事/補完その一 システムを可能にするもの/補完その二 応答</br> 補完その三 贈与のスカトロジー/おわりに