行列に並ぶ
行列に並ぶのが嫌い? 私もそうだ。あんな中に入ることを考えたらぞっとしてしまう。
でも、行列に並ばない限り、行列に並んだときにどんな感じを受けるのかを知ることはできない。
やっぱりぞっとしてしまうのかもしれないし、意外な楽しさを見つけるのかもしれない。案外日常と変わらない、ということもありえる。
「そんなことはありえない」などとは努々考えてはいけない。そんな風に考え、ぞっとしてしまうことを予期していると、まさしく君の脳はそれを現実化してしまう。つまらないところを、イライラするところを見つけるように視線を動かしてしまう。注意を払ってしまう。そのようにして、「期待通り」の結果がやってくる。とてもつまらないデキレースのように。
だから虚心で立ち向かうべきだ。自分が恐れる、あるいは嫌う出来事にこそ、先入観を捨て、まっさらな心で対峙するのだ。むろん、それは簡単なことではない。人間とは先入観の塊であり、それによって認知の効率化を図っている。先入観を捨てることは、それに逆らうことだ。わざわざ疲れることをすることだ。それこそがまさに知的な訓練なのである。
その訓練によって手にできるものは、その訓練によってしか手にできないものだ。それは何の得ももたらさないかもしれないが、世界が「自分がこうあると考える姿」とは別の姿をしている可能性があることを受け入れられる。それは絶望を振り払う最高の旗だ。希望という名の旗なのである。