時間を置いて考えること
原発事故は私たちが何かを信じるものを獲得することの必要をも教えていたように思います。しかし最近ではあまり話題にならなくなってしまいました。これだけの時間がたってからこの本を出したことに積極的な理由があるとすれば、それは、もう一度改めて原発について問題提起したかったということです。哲学者のニーチェに『反時代的考察』というタイトルの、同時代のドイツ文化を批判した本があります。「反時代的」というと反抗的で聞こえがいいわけですが、もともとのドイツ語のUnzeitgemäßeという言葉は、「時流に乗れていない」とか「時機を逸した」という意味なんですね。タイミングを逃すということも実は考える上では大切なのだと思います。